戦いの結末
「……“事象の拒絶”」
一秒が無限にも等しい体感時間の中でミラが発動した魔法。
それは刺客にとってあまりにも想定外すぎるものだった。
「馬鹿な……」
小娘の指先が触れるだけで脆くも崩れ去る自慢の水盾。
刺客の脳裏にはあらゆる疑問がよぎり儚くも消えてゆく。
「“火流弾”!」
刺客がハッと我に返ると眼前に迫る炎球。
反射的に腕をクロスさせて防御を試みるも実質的には生身による防御。
「ぐあああああああああああっ」
両腕から全身に駆け抜ける激痛に刺客は表情を歪め悶えた。
「残念だけどその腕はもう使いものにならないと思う」
「ぐうう……見事だ。殺せ」
「悪いけど殺しはボクの主義に反するから遠慮させてもらう」
生殺与奪は勝者にある。ゆえにこの場においてミラの言葉は絶対だった。
「なぜだ……。なぜお前が四条要と同じ限定魔法を使える?」
「へえ~、あの人のこと知ってるんだ。だったらいいこと教えてあげる。四条要はボクの師匠だ」
「あの男はこの館にいるのか……?」
「まさか知らずに襲撃を?」
「くっ……。そうか、捨て石だったのか。我らは……」
自分達が単なる囮だと知った刺客は戦意喪失するように両膝をついた。
「お嬢様!」
「賊を無力化した。あとの処理は任せる」
「はッ!」
警備兵に後を任せたミラが見据えるのは館の正門。
師との約束を果たした今、ミラが館に留まる理由はなかった。




