修行
――ミラの修業を始めて三カ月。
当初は日替わりで修業に付き合ってた二人の師も指導方針や価値観の違いから生じたいくつかの課題を解決するべく週ごとに交代するように変化していき、師弟ともに形や立場こそ違えど学ぶべきことの多さに日々追われていた。
「はぁ~……今日は一段と疲れた。もうダメ。しんどい……」
「おうお疲れ。ミラのやつはどうした?」
「瞑想するってさ」
「相変わらず加減を知らん努力家だな……」
共通しているのはどちらの師の修業も朝から始まり夜に終わるということ。
基礎的な術式修業はもとより実戦形式のハードな修業だってする。
ミラの魔力容量を考えれば過酷だといえる内容であるにもかかわらず、あろうことかミラは修業後に自主トレを申し出るほど力に飢えていた。
「明らかに気合でどうにかなるレベルを超えてるわ」
「やはり偶発魔法で俺の能力の一部が反映されてるみたいだな」
「実際にその場を見たわけじゃないから半信半疑だったけど、特に自己治癒力と魔力の回復力が図抜けてる。本人はまだそのことに気付いていないみたいだけど……」
単に連結系だと考えていた偶発魔術もふたを開けてみれば想像以上に厄介な代物だった。
とくに修業においてそれは顕著に表れ――中でも四条要とミラの実戦修業においては格下のミラが格上であるはずの四条要の動きをある程度先読みできるほどになっていた。
「それにどことなく動きがカナメ君に似てきてる」
「やっぱお前もそう思うか……」
「たまにあの子とカナメ君が重なって見える時すらあるわよ」
「おいおい、勘弁してくれ……」
単に実力でいえばまだまだ二人の師には及ばないもののミラの成長速度には目を見張るものがあった。
あまりにも急成長であるがゆえに言い知れぬ不安。
それは四条要とネイロの心の中にたしかに存在していた。
「もしかしたら俺達はパンドラの箱を開いたのかもな……」
資質はある。そんなことは修業を始める前から分かっていた。
ただひとえに資質があるといってもそれは数年あるいは数十年という長きに渡る修行の果てに開花させていくか、あるいは自身の命を担保に幾度となく死線を乗り越え短期間の間に強引に開花させるかのどちらかであり、いずれにしても一朝一夕でできるような生易しいものではない。
――だからこその危惧。
ミラの成長速度は普通とは比べものにならないぐらい速かった。




