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殺戮部隊と弟子  作者: 水無月14
31/82

弟子入り志願

 「……俺はやめろと言ったはずだがな」


 恐れ慄くミラを守るようにしてネイロの前に立ちはだかる四条要。

 流石のネイロも相手が相手なだけにその歩みを止めて抱いた疑問を口にした。

 「なぜ止めるの。合理的なあなたらしくもない」

 「たしかにお前の目からみればそう映るかもな」

 「だったらどうして……?」

 「簡潔に言う。この小娘を殺せば俺も死ぬ可能性がある」

 「なっ……」

 「助けられた時に偶発魔術をやらかした。俺がそれに気付いたのは小娘を締め上げた時だ。小娘の痛みや苦しみがダイレクトに俺の心に伝わってきたことから考えてまず間違いないだろう」

 「じゃあ、逆にカナメ君が傷を負えば……」

 「そのダメージは小娘にいくはずだ。俺自身は不死者とはいえ、こういった場合は俺の“不死”と偶発魔法の“連動”がどのように作用するか誰にも分からん。それを試すにしてもリスクが高すぎる」

 ミラが発動させた偶発魔法を系統で分けるとすれば連動リンク系魔法。

 それはかなりレアな部類の魔法として知られており、今までに数多の魔法使いを見てきた四条要やネイロですら実際に連動系魔法をお目にかかったことは今までに一度もないほどだった。

 「ふーん、つまり私に死なれると困るわけだ」

 「状況を理解したならここで大人しくしていろ。それが最善だ」

 「やだ。ついていく」

 「今の俺の話を聞いてたか?」

 「断るって言うのなら独自で動くけどそれで死んでも恨まないでね」

 「貴様ッ……」

 「それはお互い困るでしょ。そこで一つ提案があるんだけど……」

 もじもじとトイレを我慢するようなもったいぶった態度。

 嫌な予感を感じとった四条要は眉をひそめた。


 「ボクを弟子にしてほしい」


 耳を疑いたくなようなその言葉。開いた口が塞がらないとはまさにこの事だ。

 「はあ――――ッ!?」

 「要はボクが足手まといにならないぐらい強くなればいいんでしょ?」

 「一朝一夕で強くなれれば誰も苦労なんざしねーだろ……」

 「うん。だからスパルタで鍛え上げてくれればいい。今のボクぐらいの年齢の頃には第一線で活躍してた人なんだからできないなんて言わないでしょ?」

 「聞いてりゃ勝手なことばかり言いやがって」

 「勝手は承知。今までその為に頑張ってきたんだからこの際なんだってするよ」

 「それはつまり戦って死ぬ覚悟も殺す覚悟もあるってことだよな?」

 「自分のやりたいことをやらずして燻ってるぐらいなら死んだ方がまだマシ」

 「こいつ……」

 思わず溜息をつきたくなるほどの聞かん坊。

 しかしその眼光はかつての自分と同じ。

 四条要は静かに瞳を閉じると、諦めたように言った。

 「……半年だ。それで見込みがないなら置いていく。異存はないな?」

 「わかった。それでいい」

 「半年って……カナメ君!?」

 「仕方ないだろう。こいつぐらいの年齢の奴は基本的に話を聞かない馬鹿ばっかりだ」

 「敵に先手を打たれたらどうするつもり?」

 「おそらくそれはないだろう。三人の同胞を消され俺に逃げられたとあっては相当警戒しているはずだ。そんな不安要素が多い中で無暗に動くほど連中は馬鹿じゃない」

 「うーん……それはそうかもだけど……」

 「十年間も表舞台からその存在を隠し続けた奴等だ。仮に動くとすればその時は何かとんでもないことをやらかすに決まってる」

 自分が敵の立場ならそうする。ゆえに四条要はその憶測に確固たる自信をもっていた。

 それでもせいぜい動きを読めるのは半月ほど――。

 そこから先のことは四条要にも分からない。神のみぞ知るというやつだった。


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