地雷女
ミラのおかげで流れる気まずい空気。
決して言葉にすることはなかったが誰もがかつて殺人とは無縁だった頃の自分と重ねるようにミラを見ており、この眩しいぐらいに純情な少女が殺人者側に来なくてすむ未来を願わずにはいられなかった。
「何はともあれ、やることは決まったな」
「私もご一緒していいかしら?」
「おいおい、報酬は――……」
「折半でいい」
「あ?」
「報酬は半分でいいと言ったの。カナメ君一人で生き残った殺戮部隊全員を相手にするのはさすがにキツいでしょ。私はカナメ君より強いし、なんなら夜の相手をしてあげてもいいわよ」
「前者はともかく後者はいらん。俺はお前みたいな地雷女に手ぇ出す気ないぞ」
「ひどい! わたし地雷女なんかじゃないし!」
「自覚がないなら重症だな。どうしてここまで好かれるのか理解に苦しむ」
「もしもあなたがいなければ私の故郷は地図から消えていた。仕事で村を留守にしている間にそんなことが起これば私は自分を許せなかったと思う」
「それがなんで俺への恋愛感情へと繋がる?」
「そのことに運命を感じたからに決まってるじゃない。あなたは永遠に私の恋人よ」
「……どうやら一生理解できそうもないな」
その見た目に不満はない。単に女として見るならば上玉の部類に入るだろう。
しかし、それを補って余る重すぎる恋慕とストーカーじみた行動の数々。
四条要にとってネイロは極端過ぎて迂闊に手出しできない厄介な女だった。
「待って!」
「なにこのお嬢ちゃん。もしかしてカナメ君の知り合い?」
「知り合いもなにもここはこいつの家でさっきからずっとそこにいただろ……」
「あれ、そうだっけ? 全然気付かなかった」
興味のある相手にはとことん執着するが逆に興味のない相手には無関心。
ネイロにとってミラは風景に等しく視界に入っても認識できないような存在だった。
ゆえにミラの存在に気付いたネイロは不思議そうな顔をして首を傾げた。




