依頼
「今の殺気……貴様ら戦争でも始めるつもりか?」
「誰かと思えばジジイか。急にいなくなったと思ったら急に現れやがって」
「相変わらず口のきき方がなってないやつだ」
「そんなことより何しにきた。国王から俺の首を取るように言われたか?」
「安心しろ。仕事の依頼だ」
「仕事の依頼だぁ? なにを言って――……」
「いろいろ手を尽くして手に入れた。成功報酬の《アムブロシアの種》」
「アムブロシア……っていうと黄金果実か」
「一粒食えば一年若返るのは知ってるな。それを十粒用意した」
「――――ッ! つまり十年か! よくもまあそれだけの数を集めたものだ」
「貴様が封印されていた時間を取り戻せる計算になるわけだが……」
「それなら依頼成立だ」
「依頼内容は聞かなくていいのか?」
「だいたいの察しはつく。殺戮部隊残党の排除ってとこだろ」
「可能ならば生け捕りにしてもらいたい。聞きたいことが山ほどあるんでな」
「生け捕りが無理なら別に殺してもいいんだよな?」
「こちらの要望さえ全うしてくれるなら文句はない。我々が把握できてる分で死亡確認がとれていない殺戮部隊は貴様ら二人を含めて全部で十五人だ」
「んじゃ、俺とネイロを除く十三人を狩ればいいわけか」
「できれば相討ちが望ましいがな」
「ん……? なにか言ったか?」
「いいや、別に」
アウロが知る限り四条要の依頼達成率は百パーセント。失敗という言葉は存在しない。
どれだけ困難な依頼であったとしても一度引き受けた以上は完遂する。
そういった実績から仕事に関して疑いはないが四条要は厄介な男だ。
なぜなら個人的に依頼を引き受ける際の報酬は金や名誉などではなく『その時に自分が欲しいもの』。
それを知っていたからこそアウロはすぐに動いた。
――その通称をアムブロシアの種。
異世界から持ち出されたソレは上流貴族ですら容易には手に入らない希少品。
それゆえに危ない橋を渡りもしたが、国を滅ぼされる可能性を考えればその程度の代償など取るに足らない些細なものだった。




