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殺戮部隊と弟子  作者: 水無月14
26/82

禁句

 「たぶん本当の話よ。カナメ君は致命傷を負っても死なない」

 「なにを馬鹿な……」

 「あなたと違って実際に戦った上で言ってるの。実力に差があればもちろん生け捕りにしたけど、残念ながらそれができなかったから私と彼の戦いは本気の殺し合いに発展した。私はカナメ君の身体に即死級の風穴を二つ開けたわ」

 それは決して公には記録されることがなかった殺戮部隊同士の死闘。

 怖いもの見たさや好奇心から立ち会いてみたかったと思う一方で、記録や話で聞く限りの殺戮部隊の“非常識”っぷりを考えれば知りたくもないという二つの気持ち。複雑に絡み合う矛盾した感情は容易にミラの口を噤ませ、再びミラを聴衆者に仕立て上げた。

 「ありゃ死ぬほど痛かったな。やっぱお前のことは許せねえ」

 「本当のこと言ったら許してくれるって言ったじゃない」

 「考えてやるって言ったんだ」

 「カナメ君の嘘つき~」

 「自分の都合が良いように解釈してんじゃねぇーよ」

 「じゃあ、なんでも言うこと聞いてあげるから許して! お願い!」

 大胆にも恋人のように四条要の腕に絡みつき豊満な胸を押し当てるネイロ。

 そんなネイロを見る四条要の視線は実に冷ややかなものだった。

 

 「たしか大戦時に二十歳だったよな。それから十年経った今は――……」

 「うーんとね、それ以上言ったらたとえ相手がカナメ君でも殺しちゃうかも」

 嵐の前のような静けさを醸しながらニッコリと微笑むネイロ。

 ――生殺与奪は我にあり。

 そう思わせるには十分過ぎるほどの凄味。

 四条要にとってはちょっとした冗談のつもりだったが洒落にならない空気が渦巻いていた。

 「……少し冷やかしただけだ。マジもんの殺意向けんなよ……」

 「だって本気なんだも~ん」

 ネイロに年齢の話題は禁句。それが分からない者には死あるのみ。

 目には見えない重圧に居合わせた誰もが一様に喉の渇きを覚えた。

 

 「――――ッ!」

 そんな均衡を破ったのは叩くように開かれた玄関扉。

 不穏な空気にメスを入れるように一人の男が入ってきた。

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