執事
「さぁーてと、いるんだろ? 出て来いよ」
「えっ……?」
「殺戮部隊と同じ臭いがするって言ってんだよ」
そう言って四条要が見つめる先は階段脇の物置に通じる死角。
ミラが見た限り最初は何もなかったが――……。
「……流石ですね。殺戮部隊序列第四位“粛清者”の四条要」
観念したのか死角から出てきたのは執事の恰好をした細目の優男。
「セルヴァス!」
「これはお嬢様。心よりお帰りをお待ちしておりました」
胸に手を当て主に礼を尽くす執事。
ミラにとってこの男がいなければそもそも始まりすらしなかっただろう。
――セルヴァス・ヴァン・フィールド。
物心ついた時より頼りがいがあって優しく接してくれた兄のような存在。
ミラにとってセルヴァスは家族といっても差し支えながないぐらい強い絆で結ばれた人物だった。
「十年ぶりだな」
「はて、なんのことでしょう?」
「その様子じゃクビにでもなったか。元聖騎士団のエースさんよ」
「何を仰られているのか皆目見当がつきませんが、誰かと勘違いされているのでは?」
「くだらん茶番はよせ。同じ臭いだからすぐに分かる。お前は“こっち側”の人間だとな」
ミラを無視して冷やかに睨み合う両者。
聞きたい事はあれど、そこにミラが割って入る隙間などなかった。




