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殺戮部隊と弟子  作者: 水無月14
15/82

不死者と呼ばれた男

 「ありゃ、聖騎士団のジジイはやられたのか?」

 「ジジイとはずいぶんな挨拶だな……」

 「なんだまだ生きてたのか。それならそこで大人しく寝てろ」

 「フン、相変わらず口の利き方がなってない奴だ」

 「なにか言ったか?」

 「貴様には言いたいことがあり過ぎて何を言ったか忘れた」

 老齢のアウロにとって複数の殺戮部隊を相手にするというのは荷が重すぎた。

 なんとか殺されずに済んだだけでも儲けもの――……。

 ふとそんなことを思った瞬間に不思議と笑いが込み上げてきた。

 「フフフ……」

 ずいぶんと弱くなったものだ。最強と謳われた頃が懐かしい。

 かつては自分が主役だったが、それはもう遠い昔の話。

 体を仰向けた老人は悔しがるように一筋の涙を流した。

 

 「ここを放棄する。もはや我々が対処できる範疇を超えた」

 「おいおい、ボスになんて報告する気だ。小娘にしてやられましたってか?」

 「不測の事態だ。それもやむを得ない」

 「冗談だろ。おめおめと引き下がれってのかよ!?」

 「喧嘩……よくない……」

 「この腰抜けどもが! 俺は好きにやらせてもらうぞ」

 戦闘継続の意思を示すカーチェスは二人の殺戮部隊よりも前に出た。

 その身体に纏うのは空気をゆらめかせるほどの紅蓮の炎。

 もはや戦いを避けられる空気ではなかった。

 「噂に聞いたことがある。それが“火の玉ファイヤーボール”の二つ名で呼ばれる所以か」

 「知っててくれて嬉しいぜ。今から俺の炎でお前を消し炭にしてやる。どいつもこいつも大袈裟なんだよ。どんな魔法(ネタ)かは知らねぇーが俺は“不死者(ノスフェラトゥ)”の存在なんざ認めねえ。今まで倒してきた偽物(やつら)と同じように無様にタネ明かしして死んでもらうぜ」

 言葉の上では自信ありげなカーチェスだったが、その表情の裏には確かな焦りがあった。

 ――四条要。

 殺戮部隊の中でも別格扱いだった男を相手にそれはある意味当然だった。

 「おーおー、序列二桁ダブルナンバーが何を言い出すかと思えば……。俺は今、久々の自由を手に入れてすこぶる気分がいい。悪い事は言わねえ、さっさと家に帰って糞して寝るんだな」

 「……上等だ。ぶっ殺してやる」

 易々と挑発に乗ったカーチェスは地面を蹴るなりノータイムで四条要を屠らんとする。

 攻防一体の紅蓮の鎧。今までにこれで多くの猛者たちを葬ってきた。

 だから負けるはずがない。負けてたまるか。

 その思いがカーチェスの身体をより強く、そしてより激しく燃え上がらせた。

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