3日目(余計な心配)
放課後、大竹橋
ね「私も走ろっかなぁ〜。」
き「ええやん。で、なんで急に走ろうと?」
ね「ん?特にこれといった理由はないんだけど、ただぁ〜。」
き「ただ?」
ね「ゾンビ達から逃げ切れる脚力は欲しいかなぁ〜って。」
き「あぁ〜確かに。そらいるわ。」
大「いらんだろ。」
ね「未曾有のウイルスパンデミック、バイオハザードに備えて準備はしておこぉかなぁ〜って。でもできれば走りたくないんだよねぇ〜。」
き「ゾンビ映画好きやなぁ。なんやったけ?斎〇工がテレビで紹介してたあのゾンビ映画。」
ね「『ロンドンゾンビ紀行』」
き「そうそれ!そのロンドンゾンビなんちゃら…」
ね「…紀行。」
き「き、紀行ね。間違えたぐらいでそんな睨まんでも…。」
き「まぁその紀行を斉〇工が紹介した次の日のお前ったら。
『隠れ名作ゾンビ映画を全国ネットでピー音も入れず晒しやがって・・・!!!
隠れた名作ってのはあまり表に出ず人知れず心の隅で鈍い輝きを放つからこそ価値があるのに・・・、
それをあの全身性器の顔面繁殖工場野郎のせいで・・・、TSU〇YAでは連日レンタル中、ツ〇ッターのワード検索に【#ロンドンゾンビ紀行】がランクイン、おまけにそれを紹介した斎〇工はゾンビファンから称賛の嵐・・・、紹介した当の本人はそれ以来一切触れることなく名作を一発屋芸人のように扱った。そんなあいつを私は絶対許さない。脳天ぶち抜いてゾンビの餌にもならんピーにしてくれるわ!!!』
…あの時のねだりの取り乱しようよ。あれは笑いを通り越して引いたわぁな。」
ね「忘れて。」
き「忘れてって言われてもなぁ~。どないしよ。」
ね「忘れろ。血肉ミンチになりたくなかったら忘れろ。」
き「忘れます。」
き「・・・わ、わかったから・・・忘れるから、その笑顔は勘弁してくれへん?なぁ大福もなんか言うたって。
・・・って、大福?」
大「・・・・・。」
ね「どうしたの福ちゃん?ぼーっとしちゃって。」
大「考えてた。」
ね「なにを考えてたぁー?」
大「ゾンビになったら腹は減らずに済むのか。と。」
き「どうしようもないアホ。」
大「腹が減らないのなら私はゾンビになりたい。腹が減る苦しみ…、空腹の苦しみに勝るものはこの世にない。」
き「本物のアホやな、アホ。一回死んだ方がええ。」
ね「ゾンビだけに〜?」
き「うっさい。」
ね「福ちゃん、ゾンビもねぇお腹空くんだよ〜。死んで意識はないんだけど常に飢餓常態で血肉を好んで貪る。これゾンビの基本設定だよ〜。」
大「き、飢餓…。」
ね「福ちゃんがゾンビかぁ〜、中ボス並みに強そうだなぁ〜。」
大「私がゾンビになったら迷わず殺せ。情など必要ない。全ての思い出と共に葬ってくれ。」
ね「福ちゃん…。それはできないよ。私は福ちゃんがゾンビになっても殺さないよ。」
大「・・・ねだり。」
ね「だって、福ちゃんがゾンビになったら…
生け捕りにしてペットにするって決めてるんだ。
まさにリアルショーンオブザデッドごっこ。
もちろん福ちゃんが生きてる間はゾンビから私を全力で守ってね〜。」
大「・・・。」
き「ねだりに聞いたんが間違いやったな。」
ね「ボディーガード代は福ちゃん大好物の吉野家の牛丼。特盛りつゆだくのおしんこ味噌汁セット付・き。どう?悪くないでしょ?」
大「そ、その話…、本当か?」
ね「も〜ちろん。」
大「…生卵も付けていいか?」
ね「いいよ〜。」
大「味噌汁を豚汁に変更してもいいか?」
ね「仕方ないねぇ〜。」
大「サラダ…。」
ね「ええぇい!付けたげる!」
大「ノォォッタァァァァァ!!!」
き「もうついていけん。」
ね「その代わりどんなことがあっても私をおぶりながら守ること。わかった」
大「あぁ、わかった。約束しよう。この命に代えてもお前をおぶりながら守ってみせる。」
き「安い命やな。
…というか、なんでおんぶ?」
ね「え?だっておぶりながらだったらゾンビから逃げる脚力いらないでしょ?
福ちゃんという脚力を手に入れた私は走る必要がなくなったってね〜。
これで余計なこと考えなくて済むよ〜。」
き「大福すまん。こいつの話にのった私のせいや。
お前はもうこれ以上余計なことはもう考えるな。」