(5)俺、冒険者になるってよ
どうしてこうなったのだろう…
俺は背中にいる酔いつぶれて寝ているミルを背負い、宿屋へ向かう。俺はめっぽうお酒に強いらしく、彼女を襲うなんて考えないくらい正気を保っている。
デジャヴ?これってデジャヴ?ていうか、俺不審者にしか見えんくね?少女背負って宿屋に行く。これって完全にアウトですねはい。
俺はお世辞にも綺麗とはいえない宿屋に入ると、声を大きくして言った。
「すいませーん。突然ですがとめてくださいませんか?」
すると、出てきたのはとても若そうな店主?だった彼女は俺たちを見るなり歓喜の声をあげた。
「久しぶりのお客さんだ!どうぞどうぞ!客室なら空いてますから!一番いい部屋に泊まるといいよ!ありゃ一人酔いつぶれたみたいだねぇ」
二人一つの部屋だと誤解されるのもなんだから、二つの部屋があるか聞いてみる
「すいません…わがまま言って何ですが、2人別々の部屋で一つの部屋料金にできません?」
「いいよー部屋なら空いてるし」
ありがとうございますと言って俺は鍵を受け取ると、あることに気づいた。
この店主の手があまりにもゴツいのと、何より頭に角が生えてることに。
「お客さん気づいちゃった?あたし鬼なんだよ。それだから、あまり人が寄らんのー」
悲しげにそう言うと、店主はにこっと笑い
「あたしの名はケーナ。なにかあったら呼んでな?そんなに堅苦しくならんくていいよ」
「気をつかわせるようで悪いな…ケーナさん」
「いいってことよ!じゃああの部屋とあそこの部屋な」
鬼だか知らないけど美人だなぁ…と思いながら部屋に入り後ろで爆睡してるミルを寝かせる。外見はよくないが、中は驚くほど綺麗だった。
俺は自分の部屋に向かい、今日あったことを思いかえす。
全部夢だったらなぁ、と考えながら俺は深い眠りに誘われた
~翌日~
「おはようございます。起きてますか?」
ドアの向こう側では俺を呼ぶ声
…夢じゃなかった
「あとちょっと待って…眠い…」
「起きないとケーナさんが作ったご飯が冷めますよ?」
「ヘイヘイ今行きますって」
俺はそのままむかうと、疲れた口調で言った。
「ていうかなんでケーナさんのこと知ってんの?」
「朝早く起きて聞きましたよ。私はどこで寝てるんだってなりましたから」
「悪かったよ。…お前酒飲むのやめた方がいいと思うぞ?」
すると、ミルは照れながら
「わかりました。すいません…」
「二人ともー?飯が冷める早くこーい!」
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「ご馳走様。美味しかったよ」
すると、ケーナは自慢げに
「そりゃあ客の満足させるのがこの宿屋のモットーだからな!」
はにかんだ笑顔素敵です。
そんなことを考えながら、俺はミルに聞く
「今日は何をするんだ?」
「とりあえず冒険者になるため、教会へ行きましょう。そこでいろいろな職業があるので何をベースにして冒険者になるかですね」
「兄ちゃんまだ冒険者じゃなかったのか?職業を決めるときはワクワクするぞ」
「ケーナさんは冒険者だったのか?」
「ああ、昔な。その割には若く見えるだろ?」
そう言ってニコリと笑う。
「じゃあそろそろ行きますか。代金はこれで、また今日もとめてもらうかもしれません」
「おう待ってるよ。無事帰ってこいよ!」
そう言われると、俺はすぐさま
「なんとか頑張ってくるよ。」
といい残し宿を出た。