表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

エピローグ


 店の前庭で、シュウが薔薇の手入れをしていると、冬里がやって来る。

 冬里は、時たま庭にいるシュウとたわいもない話をする事があるので、彼は特に気にせずに手入れを続ける。


「僕さ、そろそろここを出て行こうかと思うんだけど」

「え?」

「シギから手紙をもらったんだよね」

「ああ、だからあのとき、少しぼおっとしていたんだね」

「そ」

「冬里らしくなく」

「なにそれ」


 フフ、とお互いに笑いあって、しばらくお互いに黙ったまま。

 シュウは特に問い詰めるでもなく、冬里が話し始めるのを待つ。


「サグラダファミリア」

「?」

「シギってさ、着工したときスペインにいたんだって」

「ああ、そうなんだ」

「で、えーと、2026年に完成予定だから、一緒に完成を祝わないかって」

 そこまで話すと、シュウは可笑しそうに静かに笑い出す。

「なに?」

「いや、なぜ冬里なのかな、と思って」

「うーん、なんでかな。シギは僕とシギが似てるって言うんだけど」

「それは、言えるかも」

「ええー、そうかなあ」

 冬里はまるで人ごとのように言うと、また庭をそぞろ歩きはじめる。

 ちょうど「レティヴィアン」の前まで来ると、立ち止まって彼女に顔を近づける。

「ま、僕も今すぐって訳じゃないけどね」

 冬里は、みずみずしい香りを胸に吸い込みながら、「うーん、相変わらずいい香り」と、満足したように顔を上げた。

「じゃ、そういうことだから。あ、このこと、まだ夏樹には話さないでね」

 シュウは、これにも問いかけをすることなく、ただ黙って微笑んでいた。


 その頃、仲間はずれにされているとはつゆ知らずの夏樹は、新たなレシピに挑んでいる最中だった。

 変わりゆくことは多々ありますが、『はるぶすと』は本日も通常通り営業しております。






ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

『はるぶすと』シリーズです。


由利香さんがイギリスに行っちゃう?

冬里もスペインに行っちゃうー?

この世に変わらないものはないとは言え、また新たな展開ですね。今後ものんびりとお話し続いていきそうですので、また遊びにいらして下さい。それでは。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ