第65話「再会」
メルサッピに続きコボウロでの大勝利。さらにはスペンダー公爵ら名だたる士の加入。もはや貴族諸侯の中にシアン陣営を軽視するものはいなくなった。
それまで静観を決め込んでいた者たちのほとんどはシアン陣営へとなびき、また、カスティーネ陣営の中からも内応を約束する者が幾人か出てきた。
そんな中、オータスの元にとある人物がやってくる。それはオータスにとって懐かしい顔だった。
「オータスさ~ん! お久しぶりです! なんだかしばらく見ないうちに痩せ……というかやつれましたね!」
そう言って、突如その少女はオータスに抱き着いた。
ここは謁見の間。二人の他にも人はいる。当然、周囲がどよめいた。
だが、当事者のオータスはいたって落ち着いた様子であった。呆れたようにため息を一つつくと、すぐさまそれを引きはがした。
「そういうお前はしばらく見ないうちにあざとさに磨きがかかったな……。マイン」
マイン。それがこの来訪者の名であった。
彼女は宮廷魔術師の一人であり、かつてシアンがイーバン王からの命でスタンドリッジ伯爵の元を訪ねた際にはその護衛を任されたこともあるほどの実力者である。
オータスとはじめて出会ったのも丁度その時であった。
「確かお前は宮廷魔術師……ということはケルビン殿の配下だよな? いままで一体どこにいたんだ」
「あ、えっと、みんながジェルメンテ遠征に出かけた時、私は留守居を任されていたんです。だからいままでずっと王都にいました。なのでとりあえずはカスティーネ王子に従っていたんですけど……」
先ほどとは打って変わり、そう語るマインの表情にはどこか影があった。
オータスは察する。
(ケルビン殿たちがこちらに付いたと知り、王都を抜け出したか……。だが、カスティーネとて貴重な戦力をみすみす逃すほど阿呆ではあるまい……)
よく見れば彼女の衣服はところどころ破れており、そこから見える肌には刀傷と思われる跡がある。
モルネスへと至るまでの道で幾度も追手と戦ったのだろう。
また、留守を任されていたのがマイン1人とは考えにくい。おそらく一緒に逃げた仲間たちがいたはずだ。
しかし今、ここにいるのがマインだけということは。
「わかった。ケルビン殿には俺から伝えておく。今日はもう休め」
優しく穏やかに、オータスは語り掛ける。
これ以上心配をかけまいと思ったのだろうか。これにマインは精一杯の笑顔で答えた。
「はい! お世話になりますね」
だがそんな明るい表情とは裏腹に、彼女の目からはぽとりと一粒、大粒の涙がこぼれ落ちたのだった。




