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漆黒の魔剣士と白銀の姫君  作者: よこじー
第2章 カーライム王国内乱編
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第39話「選択」

 時間を現在に戻す。

 コンドラッド家の屋敷の一室。

 ここにオータスとユイナ、そしてシアンとそのお付きの女官の4人が向かい合う形で座っている。

 今、シアンは王宮脱出からここモルネスにたどり着くまでの顛末をすべて話し終えたところだ。


「うむ……」


 オータスは頭を悩ませる。

 彼女の言葉に嘘偽りは一切ない。

 それはシアンの口ぶりからはもちろんのこと、彼女の容姿からも伝わってくる。

 疲れ切った顔。傷んでしまった髪。ドレスに至っては所々が破け、肌を露出させてしまっている。

 これはここまでの道のりが苦しく険しいものであったなによりの証拠だ。

 彼女の言うことは正しい。義は彼女にこそある。

 同情するし、助けてやりたいと思う。数多いる貴族の中からいくら前に親交があったとはいえ、こんな辺境の家を選んでくれたのだ。嬉しくないはずがない。

 だが、彼女の要請を簡単に受けるわけにはやはりいかなかった。


「これはコンドラッド家の、そしてモルネスの行く末に大きく関わることゆえ、今すぐにお答えすることはできない。家臣一同とよく話し合う必要もある。返答は明日まで待ってはくれないだろうか」


 先延ばし。それがオータスの出した結論であった。

 これにはシアンも一瞬残念そうな顔を浮かべたものの、了承してくれた。

 トリアドールの例がある以上、返答に慎重になるのは当然と言っていいだろう。

 オータスはすぐさまシアンとそのお付きの女官のために部屋を用意させる。

 そして家臣の一人にシアンらの接待役を命じた。

 深夜でありながら、屋敷はにわかに忙しくなった。





 同刻、王宮。

 カーライムの新たな王となったカスティーネは玉座に座り、不機嫌そうに酒を呷っていた。

 

「まさかシアンのヤツを逃すとはな……。ブッサーナ卿、あの者については貴殿に一切任せていたはずだが?」


 カスティーネはそう言って、玉座の前に控えているでっぷりとした体型の男を睨んだ。

 睨まれたその男は慌てて弁明する。


「お、お待ちくだされ陛下!シアンらを取り逃がしたのは私の責任ではないのです!そうオウガ!すべてはあいつのせいであります!あいつがヘイドリスなんぞに足止めを食らっていたから逃げられたのです!よって私は全然悪くない!」


 ブッサーナは必死であった。

 せっかくカスティーネの企みに協力したのに、ここで不興を買っては元も子もない。

 ブッサーナはひとまずオウガにすべての責任をなすりつけることにした。

 もっともオウガが動く羽目になったのはブッサーナが王宮内でシアンを捕らえそこなったからなのだが。

 そんななんとも醜い言い訳が続く中、一人の兵士が慌てた様子で部屋に入ってきた。

 その様子から重大な要件であることが予想できる。


「どうした」


「ハッ!シアン殿下の居場所が判明しました!場所はモルネス!領主であるコンドラッド伯爵の屋敷に逃げた模様です!」


 その言葉にカスティーネは思わず笑みを浮かべる。

 多くの兵を放ち、シアンの行方を探させてはいたが、まさかこうも早く見つけられるとは思っていなかった。

 これは彼にとってうれしい誤算であった。

 カスティーネは勢いよく立ち上がると、高らかにに叫ぶ。


「ブッサーナ=エイヴァンスに命じる!大軍を率い、モルネスに侵攻せよ!もしシアンを匿うようならば、伯爵家ごと潰して構わぬ!」


「ハッ!おまかせを!」


 こうしてコンドラッド家はこの件に対して無関係の立場でいることは不可能となった。

 シアンを匿うか、それとも引き渡すか。答えは二つに一つとなったのである。

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