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漆黒の魔剣士と白銀の姫君  作者: よこじー
第2章 カーライム王国内乱編
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第35話「脱出」

 事件が起きたのは、次期国王が指名されたその日からわずか数日後のことであった。

 夕方ごろ、一人の男がシアンのもとを訪ねてきた。

 男の名はマルコ=ヘイドリス。王国南方に領地を持つ男爵で年齢は29歳。肌は浅黒く日焼けしていて、体型はやや大柄。顔や腕にはいくつかの刀傷がある。

 彼は数多の戦場で武功をあげてきた猛将であり、グリーウェイル侯爵の亡き今、南方防衛の要ともいえる男である。

 シアンはヘイドリス男爵と面識はなかったが、イーバン王が信頼のおける男だとよく語っていたので彼のことは知っていた。


「お初にお目にかかります姫殿下。我が名はマルコ=ヘイドリス。此度は火急の用件があり、罷り越しました」


 そう語る男爵の肌には無数の汗が流れており、また服も少し乱れていることから彼がここまで走ってきたことが分かる。

 それだけ急ぎシアンに伝えなければならない案件だということだ。

 シアンの表情に緊張が走る。

 男爵は気持ちを落ち着けるようにやや間を置くと、言葉を続けた。


「カスティーネ殿下がご謀反。彼は国王陛下を殺め、さらにはあなた様を捕らえてその罪をなすりつけようとしているようです」

 

 男爵が異変に気が付いたのは、カスティーネ王子と六将の一人・エイヴァンス公爵がコソコソと周りを警戒するように王宮内の小さな部屋に入っていくのを見かけたときである。

 不審に思った彼が後を追い、その部屋の前で聞き耳を立ててみると、そこから聞こえてきたのはなんとイーバン王の暗殺計画であった。さらには国王の暗殺は既に成功しており、後はシアンに罪を擦り付けるだけだということもわかった。

 ヘイドリス男爵はすぐさま事の真偽を確かめるべく、玉座の間へと向かった。

 だが、それは入り口を守る衛兵に阻まれた。


「国王陛下は現在シアン殿下と重要な話の最中であり、何人たりとも通さないよう宰相閣下から言われています」


 それが彼らの主張であった。

 そこで男爵がシアンの部屋を訪ねてみたところ、こうしてシアンと会うことが出来たというわけである。

 衛兵が嘘をついたということはつまり彼はカスティーネの息がかかった者であったということ。すなわちカスティーネらの計画は順調に進んでいることを意味する。


「おそらくここにもすぐ奴らの手が伸びてくるでしょう。私が護衛をいたしますので、一刻も早く脱出を」


「わかりました。頼りにしています」


 初めは動揺していたシアンであったが、決断は早かった。

 彼女の脳裏に浮かんでいるのは数日前、シアンがイーバン王より次代の王に指名されたときのカスティーネの不満そうな表情。

 あの時からなにか嫌な予感はしていたのだ。

 シアンは素早く支度をすませるとお付きの女官を連れ部屋を出る。

 先導はヘイドリス男爵。その後にシアン、そして女官と続く。

 こうして彼女の逃走劇は始まった。

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