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漆黒の魔剣士と白銀の姫君  作者: よこじー
第1章 モルネス居候編
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第32話「乱世の訪れ」

 オータスはいま、戦のなかにいた。

 発端は数日前のこと、オータスのもとにモルネス領内のとある村にオークの群れが出現したという情報がもたらされたのがきっかけであった。

 詳しく話を聞いてみれば、オークたちは畑を荒らし、抵抗した村人数人を殺したという。

 そこでオータスが兵を何人か調査に向かわせたところ、村の近くの森にオークの巣を発見。

 それを聞いたオータスはオークを殲滅せんと兵300あまりを率いてすぐさま出陣し、そして現在に至るのである。


(姫殿下とムーデントへ向かう途中にもこいつらに襲われたが……そうか、やはりこの近くに住み着いていたのか)


 オータスは迫りくるオークたちを黒き剣で斬りながら、シアンの供としてムーデントに向かった際のオーク襲撃を思い出す。

 あのときに比べ敵の数ははるかに多い。だがそれはオータス側も同じであった。

 300のモルネス兵たちは怯むことなくオークの群れに立ち向かっていた。

 なかでも先陣で戦うトレグルの活躍はすさまじかった。


「どりゃああああああ!」


 トレグルは馬上から自慢の大剣を勢いよく振るう。するとトレグルの周りに集まっていたオークたちは一瞬にして肉の塊と化した。

 ぎりぎり攻撃を避けなんとか無事だった残りのオークたちは仲間たちの無惨な骸を見て戦慄する。彼らは自分もこうなってはたまらん、とその場から我先にと逃げようとした。

 だがそれは叶わない。トレグルの後ろに控えていた一人の弓兵が放った矢が逃げるオークの後頭部に見事命中したのだ。


「よし……」


 弓兵は安堵した表情で小さく呟く。

 弓を射たのは、なんとまだ齢20にも満たないであろう少女であった。

 肩にかかるかどうかの短く艶のある赤い髪。顔はまだ少しの幼さが残っているものの美しく、全体的にその容姿や立ち振る舞いからは落ち着いた雰囲気が感じられた。


「なあユイナ。トレグルの後ろにいるあの()は何者なんだ?なかなかの弓の名手のようだが……」


 彼女の弓を後方で見ていたオータスは隣にいるユイナに尋ねる。

 初めて戦の指揮をとるオータスの補佐と護衛のため、ユイナはこの戦いでは常に彼の隣にいた。


「ああ、彼女の名前はミーナ。トレグルさんの娘さんなんだけど、父親に似て武芸達者で弓の腕ならたぶんモルネス一かも」


「へぇ……トレグルの娘……。あいつ結婚して娘までいたのか。しかし、顔のほうは父親に似なくてよかったよかった。あの可愛さはおそらく母譲りなんだろうな」


 そう言って冗談っぽく笑うオータス。

 だが、ユイナのほうは全く笑っていなかった。


「か、可愛い?へ、へぇ~、オータスはああいう娘が好みなんだ~?」


「いやいや、なんでそうなる!あくまで客観的に俺は言っただけであってだなぁ……」


 オータスの何気ない言葉に嫉妬するユイナ。

 一方、ユイナがなにに怒っているのかわからないがとりあえず弁明をするオータス。

 戦の最中であっても二人が平常運転なのは、この戦いが終始モルネス軍優位であったからだろう。

 結局、この戦いはモルネス軍が勝利。オークたちは一匹残らず討ち取られた。

 こうしてオータスは着々と領民や兵士からの信頼を得ていったのであった。






 オータスがモルネスで魔物討伐を果たしたその夜のこと。

 遠く離れた王都マテロにて一つの事件が起きていた。


「大変だ!国王陛下が……亡くなられた!」


「なんだって!?それは本当か!」


「だが、俺が昨日見たときは元気そうだったぞ!」


 王宮の兵たちはみな混乱していた。

 急きょ飛び込んできたイーバン王崩御の報せ。

 前日まで健在であった王の突然の死に驚かないものなどいるはずがなかった。

 そんな中、王宮の兵たちに一つの場所に集まるように指示が下った。なんでも国王の死について説明があるのだという。

 王宮内にいた全兵士が王宮前の広場に集まり、ずらりと整列する。

 そしてしばらくたって、彼らの前に一人の男が現れた。

 男の名はカスティーネ=ハンセルン=カーライム。亡くなったイーバン王の息子である。


「皆の者よく聞け!もうすでに知っているとは思うが、我が父・イーバン=ハンセルン=カーライムが先ほど亡くなられた!いや、殺されたのだ!王位を奪おうとたくらむ卑しき者の手によって!」


 カスティーネの口から語られた衝撃の言葉に兵たちはみな動揺を隠せない。

 だが、それと同時に彼らの心には怒りの炎が灯る。

 主君が討たれたのだ。その気持ちは王家に仕えるものとして至極当然といっていいだろう。

 誰もが国王の仇討ちに燃える中、ついにカスティーネは王を殺したその者の名を口にした。


「その卑しき者の名はシアン=ハンセルン=カーライム!俺の妹だ!」


 その予想外の名にみな驚愕したのは言うまでもない。

 そしてこれが長きにわたる動乱の始まりであった。

 まだ田舎の小貴族に過ぎぬオータス=コンドラッドもまた、この動乱に巻き込まれていくこととなる。

以上で第1章は終了!次回より新章へと突入します!

新章ではいよいよ主人公・オータスが英雄への階段を上り始めます!

どうか楽しんでいただけたら嬉しいなと思います!

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