表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
漆黒の魔剣士と白銀の姫君  作者: よこじー
第1章 モルネス居候編
19/117

第18話「出陣」

 話し合いの末、ジェルメンテ侵攻には聖騎士・シャイニーヌ=アレンティア、大魔術師・ケルビン=メンティ、コーリン領主・ショーン=スペンダーの3名が赴くこととなった。

 シャイニーヌは六将唯一の女性で、年齢も16と若い。

 艶のある金髪によく整った顔。そして服の上からでもわかる豊満な胸。

 品のある所作も相まって一見どこかの貴族の令嬢にしか見えない。

 だが、そんな見た目とは裏腹に、彼女も数々の戦場を渡り歩き、数多の屍を積み上げてきた猛者の一人だ。

 剣で彼女に勝てる者はカーライムには一人もいないだろうとまで言われるほどの実力者である。

 そして彼女の率いるアルネス騎士団は王国最強と呼ばれている。


「ケルビン殿、スペンダー公爵。若輩者ですがどうぞよろしくお願いします」


 シャイニーヌはそう言うと、共に轡を並べる二人に頭を下げた。

 六将といえど、その中に多少の上下関係は存在する。

 シャイニーヌはこの中で最も若く、六将になったのも遅いため、このように常に腰を低くして接する必要があるのだ。


「なに、そうかしこまらなくてもいい」


 だが、これに対し、当のスペンダー公爵は苦笑しながらすぐに彼女に頭を上げるよう促した。

 ショーン=スペンダーはカーライム北方の地・コーリンを治める公爵である。

 目の下のクマと顎の無精ひげで老けて見られがちだが、歳はまだ21。六将の中ではシャイニーヌの次に若い。

 そのため、歳の近いシャイニーヌには好意的なのだ。

 そして、シャイニーヌに好意的な男はもう一人いた。


「彼の言うとおりだ。ギクシャクしていては勝てるものも勝てんわい。もっと気楽にせい」


 そうスペンダー公爵に同意したのはケルビン=メンティ。

 彼は王国唯一の魔術師団・ノーネス魔術師団の団長である。

 歳は70とかなり高齢だが、彼が本気を出せば町の一つは消せるという噂があるほどの実力者だ。

 彼がシャイニーヌに好意的な理由、それはスペンダー公爵とは逆で歳が離れすぎているからである。

 さすがにここまでの年齢差となると、むしろ孫のように愛おしく思えてくるのだ。

 こうして、比較的関係良好な3人は軍備を整えた後、王都マテロを出発した。

 その数約15万。総指揮官はスペンダー公爵、軍師はケルビンがそれぞれ務める。

 いま、ジェルメンテとの一大決戦が始まりを告げようとしていた。





 軍議が終わるとブッサーナ=エイヴァンスは急ぎルッサムに帰還した。

 急いでるといっても今回のジェルメンテ侵攻で何かを任されたわけではない。

 町でさらった娘との続きを楽しむためである。


「おい、はやくあの娘をここに持ってまいれ!」

 

 でっぷりとした醜い腹を揺らし、エイヴァンス公爵は咆えた。

 するとすぐさま兵士がやってきた。

 公爵の命で娘を牢に入れた兵士である。

 だが、彼の顔色はとても悪い。何かアクシデントが起きたのだと公爵は直感した。


「何があった。正直に言えば許してやる」


 公爵はそう言うと兵士のほうを睨みつけた。

 とても許してくれるような雰囲気ではない。

 だが、彼には正直に言うしか選択肢は残されていなかった。

 そして、少しの間のあと、兵士は恐る恐る口を開いた。


「牢の中で、舌を噛み……えっとその、死にました……」


 その言葉に公爵が激怒したのは言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ