第17話「カーライム六将」
王宮のとある会議室。
6人の男女が中央の大きな円卓を囲んでいる。
宰相・バイロン=グロワーズ、大将軍・オウガ=バルディアス、聖騎士・シャイニーヌ=アレンティア、大魔術師・ケルビン=メンティ、ルッサム領主・ブッサーナ=エイヴァンス、コーリン領主・ショーン=スペンダー。
彼らは今後のジェルメンテとの戦いについて話し合うべく集められたカーライムを代表する将たちだ。
この6人を合わせて『カーライム六将』という。
「皆忙しい中、よく来てくれた」
そう最初に口を開いたのは宰相のバイロン。国王の右腕と呼ばれる男である。
今回の軍議では彼が進行役を務める。
「実は昨日、王宮にジェルメンテから使者が来た」
バイロンはそう言うと、その時の詳しい状況を語り始めた。
それはちょうど夕方ごろのことである。
突如ジェルメンテからの使者だと名乗る一人の騎士が現れた。
先の戦で両国の国交回復は絶望的。
いまさら何を言うというのか。
イーバン王や重臣たちが興味深げに見つめるなか、彼は言った。
「『先の戦は一部の過激な者達が勝手に仕組んだこと。その者達には相応の罰を与えたゆえ、カーライムとはどうかいままでと変わらぬ関係を築いていきたい』以上が国王陛下のお言葉です」
その場に居た誰もが驚愕し、そして呆れた。
彼の言い分にはあまりに無理があったし、もし仮にその言葉が事実だったとしても、今までと変わらない関係というのはいささか虫が良すぎる。
これには温厚なことで知られるイーバン王もさすがに激怒した。
結局、両国の関係は回復するどころか、より悪化する結果となったのである。
「そして先ほど、国王陛下はジェルメンテ侵攻をお決めになられた。此度集まってもらったのはその陣容について決めるためだ」
バイロンはそう言うと他の5人を見渡した。
先の戦のように、食い止めるだけならばシューベルやユーウェルのような地方の貴族たちに頼る。
だが、こちらから仕掛けるとなると話は別だ。
敵は強国・ジェルメンテ。国の最大戦力をぶつけなければならない。
すなわちこの場に居る6人のうちから遠征軍を選ぶということだ。
「俺が行こう」
皆が沈黙する中、一人の男が名乗りをあげた。
オウガ=バルディアス。
彼はカーライムが誇る猛将で、『大将軍』という武人の頂を意味する官職を持つ。
単純にカーライムの最大戦力ということならば彼は欠かせない。
だが、バイロンは少し考えた後、首を横に振った。
「いや、オウガ殿は先のグリーウェイル討伐から帰ってきたばかり。そもそも『大将軍』の本来の任はこの都を守護すること。此度は留守をお願いしたい」
これにオウガは不満げな表情を浮かべたが、その後のバイロンの必死の説得で渋々了承した。




