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事件勃発

「真理、しおり、今日クラブの後カフェ行かへん?舞花が昨日お小遣い日で、久しぶりにちょっとカフェでゆっくりしたいねんて。」

また行くんか。真理は思った。親が医者で、お金持ちな舞花は、クラブの後よくカフェやカラオケ、時間のある時はゲームセンターなど様々な所に遊びに行くのだ。それに、しおりや真理もついていかないといけないのである。おかげで、真理の財布はほとんどカラだった。だが、今日は文芸部があるのでお金を費やさずにすむ。

「そうなん?行く行く!あたしの他に誰行くん?」

しおりは即答えた。まだ彼女のお小遣いは底をついていないらしい。真理としおりにカフェの約束を伝えに来た涼は、「舞花、あたし、加奈、沙弥…」と舞花の側近の名前を挙げて行く。

「で、真理は?」

「あ、あたしは、今日文芸部やねん…だから行かれへんわ。ごめん、って舞花に伝えといてくれへん?」

真理は、結局バト部と文芸部をかけもちした。舞花のグループに、部活をかけもちしている子が多いことに、真理は助けられた。

「あー、そうなん…しおりと真理はセットやのにぃ。でもしょうがないな。オッケー、言っとくわ。じゃ、また明日!」

真理は、しおり、涼と別れた。しおりと涼の2人は、昇降口に向かって歩いていく。

「それで、舞花はおごってくれるって?」

「そうらしいで!やった!って…なわけないやん!自腹やで自腹!」

「アハハハハ!」

しおりはすっかり舞花グループに馴染んだ。真理は、しおりに置いて行かれる気がした。


「ただいまー」

自宅の玄関。真理はいつも通りの家にホッとしながら、リビングに向かった。

「あ、おかえり、真理。早かったなぁ。すぐお茶入れるわ。今日は何がいい?レモンティーか、抹茶ラテか…」

ソファーに座ってテレビを見ていた真理の母-菜子(なこ)は、真理に笑顔を向けた。

菜子は、とても優しくて心配性な性格だ。そして、独りっ子の真理には、いつも気遣ってくれる良い母親なのだ。真理は、そんな母が大好きだ。

「えーっと、今日は抹茶ラテがいい。」

「そう、分かった。」

菜子がキッチンに入った。真理は、付けっ放しにしていたテレビの画面を消そうとした。が…

『東大阪市上石切町のカフェテリア『favorite』で、TRD株式会社社長、寺田 貴夫氏が、カフェテリアのコーヒーを飲んで謎の死を遂げました。枚岡警察は、詳しい捜査を続けています…』

「おぉ!」

真理は、思わず歓声を上げた。

(この事件、私らで解決したらどうやろう!?)

…果たして、うまく行くのだろうか…と言いたい所だが、真理は迷わず携帯電話を開いた。しおりや聡太、将樹にこの事件のことをメールするのだ。ワクワクしてボタンを器用に押しながら、可愛い絵文字を挿入する。

「よしっ、送信っ…」

送信100% と表示された。真理の頭の中は、事件100%だった。

「真理、お茶入れたで。あと、クッキーも食べる?手作りしてんけど。」

「食べる!」

太らないことを祈るばかりだ。…と、真理の携帯電話の着メロが鳴った。その音に反応して、真理の体がピクリと動く。

(聡太だっ!)

メールの内容は、こうだ。「わぉ!田原、お手柄!今度会議開こー(≧∇≦)」聡太らしいメールだ。真理は笑った。…すると、またメールが受信された。

「わかった。田原、ナイス!会議しよう。」

絵文字の無いシンプルなメールは将樹だ。真理は、またも笑った。

「真理、何不気味に笑ってるん…彼氏からのメールか?ふっふっふ…」

菜子が言った。

「ち、違う!って、お母さんも笑い方不気味ー。」

言っている間に、またメールが来た。今度はしおりからだ。

「真理、でかした!♡今度聡太んちで会議やろーぜ!広いから…(^o^)」

聡太の家は塾をやっているらしい。

真理は夢中になって会議の日時と場所決めのメールを打った。心臓がばくばくと鳴り、携帯電話を持つ手が震える。

真理お気に入りの抹茶ラテは、もうすっかり冷めてしまっていた…。


「事件が起きたのは東大阪市上石切町2丁目のカフェテリア『favorite(フェイボリット)』。TRD株式会社社長の寺田(てらだ)貴夫(たかお)氏がブラックコーヒーを飲んだところ、急に苦しみだして間もなく死亡した…。」

ここは聡太の家。真理、しおり、将樹がこぞって聡太の家を主張したため、聡太がついに根負けし、聡太の家で会議をすることになったのだ。もちろん、議長は聡太。

「あたし、このカフェ、この前行ったで。舞花らと。」

しおりが言った。そういえばそうだ、と真理は思った。

「結構美味しいやんな。サンドイッチ食べれるし。あと駅前やもん、行きやすいわ。」

聡太がふ〜んと相槌を打つ。1人だけ椅子に座って、議長気取りだ。

「あんまり悪そうな店じゃないってことやんな。」

将樹が、聡太をチラチラと見ながら言った。真理も、鼻をほじくりまわしている聡太を見た。

「聡太!」

いきなりしおりが叫んだ。

「はいいいいっー!!!」

ガッシャーン!…と、凄まじい音がしたと思ったら…

「ほんま、聡太ってマヌケー。」

しおりがしゃがんで何かを突っついている。…うつ伏せになって倒れている聡太だった。

「うるさいわ!誰でもいきなり名前呼ばれたらビビるわ!」

聡太は、しおりの手をふりはらって椅子に座った。顔が真っ赤になって、もともとたこ焼きみたいなまんまる顔が、もっと膨らんで見え、真理たちは大爆笑した。いつも喜怒哀楽がハッキリしない将樹も、机をドンドンと叩いて笑い転げている。面白くないのが聡太。聡太は思いっきり机を叩き、立ち上がった。

「わかった!結論としては、家でカフェテリアfavoriteについて調べてくる!分かったやんな?…ほら、帰れよー!!」

聡太は、机に置いていたタブレットやスマートフォンを片付けてしまった。しおりが名残惜しそうにしょんぼりする。

「冷徹な議長やな…議長、変更?」

将樹の目が意地悪そうに光った。聡太はドキッとした様子だ。

「おいっ、ちょっとまてよぉ、議長は、お、俺やって!…次もここで会議してもいいから、さ?ほんまにお願いやって!ちょー、将樹ぃーーー!」

聡太の声がだんだん涙声になってくる。真理としおりは、クスクスと笑う。

「わーった、わーった。泣き虫聡太くん。冷徹議長さん。」

将樹は聡太の頭をちょっとなでてからドアを開けた。真理もしおりもそれに続く。

「じゃー、聡太!コケるなよぉー!」

「ばいばい!」

3人はクスクス笑いながら聡太の家を出た。大きな家をもう1度拝んでから10秒で家に着く。

「よっし、調べよ!」

真理は、パソコンを開いた。検索の画面が出てくる。

「カフェテリア『favorite』…オーナー、塚本(つかもと) 恭介(きょうすけ)のブログ」

(ブログやってんねんな)

カチッとページを開く。ブログは一般公開されていた。

(面白いブログやな…綺麗な写真もあるし、子供もおるって…)

思ったよりブログの内容は明るかった。カフェテリアでの些細な笑い、子供の微笑ましい光景…ただ幸せな家庭のオジサンにしか思われない。

(事件じゃないんかな…)

真理はホッとしたのか、残念な気持ちになったのか分からないようだ。

(うーん…でも、このブログ、今年の2月28日で終わってる…)

真理は、「最新のブログを見る」というページをクリックした。だが…

(最新のブログ、2月28日にになってるやん…今までは一週間に2日ぐらいのペースで書いてんのに…)

カレンダーを見上げると、今日は4月28日。となれば、3月から4月の今まで全くブログに手をつけていないということになる。

(おかしいやんな?やっぱりこれは事件かも!)

真理は、メモ帳にブログの更新のことを書き留めておいた。


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