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喜びの春

春。東大阪市石切中学校は、この日入学式を迎えた。

体育館には、不安と希望にかられた新中1年生や、その保護者達がずらりと並んでいる。また、中学の教師や在校生など、入学式の盛り上げ役の人達も、温かい眼差しで入学生を見守る。

(私も、やっと中学生かぁ。)

入学生の席に座ったおさげ髪の少女は、そう思いながら壇上を見上げた。校長らしき男が、胸を張って入学生を見渡す。優しそうな垂れ目で小太りの校長に、誰もが好感を抱いた。

「入学生の皆さん、ご入学おめでとうございます。」

校長の鷹山(たかやま)浩一(こういち)が、笑顔でそう言った。原稿をちらちらと見ながら続きを話す様子が、子供みたいで可愛らしい。


「鷹山校長先生、かわいかったなぁ。」

式が終わると、新入生たちが一斉に校長のことを話し出した。前を歩く引率の教師が「静かに」と言っても、生徒は笑いながら話をやめない。

「真理!」

おさげ髪の少女は、名前を呼ばれて振り返った。後ろには、親友のしおりが立っている。

「同じクラスやったらいいのになぁ。」

しおりが言った。真理と肩を並べて歩く。

「うん、6年の時は違うクラスやったもんなぁ。」

真理がそう言ったとき、

「おっはよー、田原、池内!」

2人の男子が走り寄ってきた。この2人は、真理やしおりの幼なじみで、聡太(そうた)将樹(まさき)だ。

「お、何かいい事件あったん?」

聡太が言った。説明すると、真理、しおり、聡太、将樹は、小さな頃からスリル満点の遊びが大好きだった。その遊びといえば「複雑怪奇な事件を解決する名探偵になる」という遊びだ。決して「ゴッコ」ではない。なのだが、今まで4人は色々な事件を解決してきたわけではないのである。

「あるわけないやん。今まで1回も事件に出くわしてないやんか。」

しおりがきっぱりと言った。真理もうなずく。

「小6のときは、『出くわしかけた』けど。」

小6の春、4人はクラスが離れ離れになった。A組が聡太、B組が真理、C組がしおり、D組が将樹だった。落ち込んでいるところに、事件が起こったのである。A組の村田梨乃という女子の母親が殺されたのだ。(詳しくは『悪魔の住む石』に載っています)4人は早速集まって会議を開き、解決に挑んだが、梨乃の親友たちが見事に解決してみせたので、4人は骨折り損のくたびれもうけとなってしまったのだ。

「村田さんの親友の如月亜希さん、かっこよかったなぁ。」

梨乃の親友たちの中でも、最も活躍したのは如月亜希だ。亜希は、スタイルが良く、誰が見ても可愛らしい顔立ちをしていて、小学校、特に男子に人気だった。

「如月っていいよなぁー」

聡太が小声で将樹に耳打ちした。将樹は少し顔を歪めて、

「いや、如月は勉強面ではほんまどアホ(・・・)やからな。俺はバカな奴は嫌いや。」

と言った。将樹は学年の秀才で、A組の仁川卓朗や北田蒼璃とトップを争っていた。トップを奪い合う3人は、中学受験に試みたが、将樹だけが落ちたため、将樹は屈辱を味わった。北田蒼璃はともかく、仁川卓朗は将樹の第一志望校に受かり入学したので、将樹は少し卓朗を妬ましく思っている。

「わかった、わかった、卓朗は憎いねんな。」

「誰もその話はしてへん。」

「ごめんなさいのKissing you〜」

聡太がふざける。聡太は将樹とは正反対の、成績が学年ワーストをはいずりまわる、お笑い系男子だ。

「あの掲示板に、クラス分け表が貼ってあるから各自、自分のクラスを確認してそれぞれの教室に入るようにな。」

引率の教師はそう言うと、教務室に入って行った。

「あー、緊張するー!」

「どーしよー」

空気がざわつく。真理としおりも、お互いの手を握りしめながら掲示板に向かう。

「きゃー!◯◯、同じクラスやん!」

喜びの声。

「はぁ…」

悲しみのため息。

真理は、早速自分の名前と親友の名前を探した。

(A組、安藤、井ノ原、池内!しおりはA組や!)

心臓がばくばくと鳴り響く。

(…如月、北川……、瀬田、田原、築山…あれ…)

顔を紅潮させながらもう一度調べる。瀬田、田原…

「あった!」

真理は思わず叫んだ。周りにいた生徒が、怪訝そうな顔をして真理を見る。真理は少しうつむいた。

「真理!」

しおりが真理の手を引っ張って掲示板から離れる。

「やった!聡太と将樹も同じA組やで!」

しおりが小声で叫ぶ。真理は目を見開いた。

「やったーーーーーーーー!」

2人の声が重なった。


こんにちは!あみあみっちです!

やっと2冊目の小説、投稿開始しましたー!

「悪魔シリーズ」として、もう一冊出そうと思っているので、是非3冊目も読んでくださいね!



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