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旧作  作者: hayashi
シーズン2 第4章「特命チーム」
57/114

セイヤの作戦

前回までのお話。

ルイが襲われた。しかし、すでにそれは想定済みだった。公安隊の協力を得ていた特命チームは工作員と思われる犯人らを逮捕した。

 今回の『ルイ・アイーダ襲撃』をセイヤは前もって想定していた。


 ルイの拉致事件の後、セイヤはサギーがこのまま引き下がるとは思えなかった。サギーの工作は失敗続きだったから、焦りも働いていただろう……だから、機会さえあればルイを始末することにこだわるのでは、と危惧を抱いていた。


 まずはルイに相談し、アントン・ダラーとほかの探偵にルイの周辺を探らせてみた。

 彼らも『尾行』『見張り』のプロなので、もしルイの周辺で妙な動きがあれば感じるものがあるだろう。でも、そこで何の動きもないようであれば、自分の単なる杞憂だ。


 しかし、探らせてみたアントンらの感触は「ルイは何人かに尾行されているようだ。怪しい動きがある」というものだった。


 これでシベリカ工作員によるルイ暗殺計画の疑いが捨てきれなくなった。少なくとも、まだルイにこだわっていることは確かだ。


 最近、シベリカ人への差別や嫌がらせが増えてきたが、その原因を作ったのはルイ・アイーダである、という声がテレビなどで割とよく聞かれるようになっていた。ごく一部の人の意見だが、テレビは『ルイ・アイーダを批判する者』を面白がって取り上げていた。


 これにより世間も『一般のシベリカ人はルイ・アイーダを嫌悪している』と受け取るようになっていった。


 サギーが避けたかったのは……シベリカ国が工作員を使って殺人という重犯罪を行い、シベリカが『国として動いたこと』をトウア国民に疑われることだ。

 だが『一般シベリカ人の個人的な犯罪』であれば問題はない。

 そして今ならば「ルイ・アイーダは一般シベリカ人に憎まれて襲われた」と思わせることができる。


 ファン隊長からいろんな情報を得ていただろうサギーは、アリア人と地下でつながっているルイがマハート氏暗殺計画を嗅ぎ付けたことを察していただろう。そんなルイは、サギーら工作員にとって邪魔な存在であり、できれば始末しておきたいだろう。


 ……今度はルイの拉致誘拐ではなく、殺害に動くかもしれない。今までのサギーのやり方を分析し、セイヤはそう考えた。


   ・・・・・・・・・・・・


「それにしても、お前は敵の考えをよく読むよな」

 特命チーム専用室で報告書を書き終えたジャンがセイヤに話しかけてきた。


「相手の立場になって考えてみただけです」

 セイヤはジャンを見やり、こう説明した。

「シベリカ国にとって常にマイナス働くルイ・アイーダをどうするか、それにはルイを始末するのが一番手っ取り早い。でも、シベリカが国として関わったことをトウア国民に悟られたくない……じゃないと、ますますシベリカ国は警戒され、ルイの今までの発言に信憑性を持たせてしまいます。

 けど、一般シベリカ人の恨みによる単なる個人的犯罪であれば、国は関係ありません。ルイ・アイーダ殺害を個人的犯罪に見せかけるのであれば、今しかない。そう思いました」


 もちろん――この『作戦』は予めルイに伝え、いろいろと指示していた。そして帰りが夜中になった時に狙われる可能性が高いことも知らせていた。

 いや最初は、こんな危険なことなどせず、ルイには常に護衛をつけるようにと忠告した。

 だがルイは「拉致事件と同じようにわざと相手の罠にはまるから、犯人を捕まえてくれ」と頼み込んできた。「危険だから」と断っても、ルイは頑として聞かなかった。「護衛はつけない」とまで言い張った。


 そうなるとルイを守るためにこちらが動くしかなかった。

 セイヤは、まず公安隊の協力を仰ぎたいとしてルッカー治安局長へ直談判した。自分たち特命チームは隊の垣根を越えた活動ができるということで、治安局長の鶴の一声があれば、公安隊をバックにつけることが可能だった。


 ルッカーは、セイヤの考えに乗ってくれた。先の『ルイ・アイーダ拉致事件』の被疑者らの供述にほとんど進展が見られなかったこともルッカーの背を押したようだ。


 セイヤたちは、ルッカー治安局長を通し、監視と尾行のプロである公安隊をバックにつけ、ルイ・アイーダ周辺に怪しい動きがないかを本格的に見張った。工作員らも注意していただろうが、人海術が使えるプロ中のプロである公安隊の動きは察知できなかったようだ。


 公安隊はルイ・アイーダを監視するグループの存在をつきとめ、そのグループも監視対象にした。

 ――しかし、サギーにまでは行き着かなかった。


 こうして公安の協力を得て、犯人が植え込みに隠れているところも知った上で、リサとジャンとセイヤは狙撃手として密かに配置につき、ルイが襲われるのを待った。


 その周辺は公安隊員とその協力者が一般人を装い、監視体制を敷き、リサとジャンとセイヤが工作員に嗅ぎ付けられずに配置につけるよう尽力してくれていた。


 ルイ・アイーダ暗殺にはまず銃は使われない――トウア国では一般人の銃の所持は禁止されている。一般シベリカ人の犯罪に見せかけるにはナイフで刺殺しようとするだろう、とセイヤは踏んだ。


 ルイには、昼間の移動はできるだけ車を使わせ、出先で一人でいることを禁じた。

 そうすれば、ルイを襲う機会は、自宅マンションから車までの『ほんのひと時』しかなくなる。敵側は当然、第三者に目撃されないようにしたいだろうから、狙う時間帯も限られてくる。それは一般人が眠りについている夜遅くから明け方、道端に人がいなくなる時間帯だ。


 調べようと思えば簡単に調べられるルイの仕事のスケジュールを工作員らは当然、把握しているだろう。そんな彼らがルイを狙う日時の予測は簡単につく。


 そして『その日』、ついに犯人が現われ、ルイはセイヤに言われた通り、マンションには入らず、そのまま狙撃の邪魔にならないよう身を伏せた。万が一に備え、防弾ベストも身に着けていた。前もって、犯人がマンション横にある植え込みに隠れていることも、セイヤからの連絡を受け、知っていた。犯人が現われてから、リサとジャンとセイヤの狙撃の邪魔にならないよう、どう移動し、どの位置で地面に伏せるかも指示を受けていた。


 たとえ犯人への狙撃が失敗しても銃声を聞けば、犯人はそれ以上ルイを襲おうとせず、そのまま逃げるはずである。威嚇射撃でも同様だ。

 万が一、犯人がナイフではなく、銃を取り出すようなそぶりを見せた場合、即座に発砲することになっていた。


 ――ルイの安全を最優先に考えながら、この作戦が運ばれたのだった。


あとがき

このプライオリティ本編の番外編「パラレル・プライオリティ日本編」を始めました。

http://ncode.syosetu.com/n2006cl/


本編のキャラたちが日本人として登場する、現代の日本を舞台にした物語です。

不定期に更新していく予定です。

本編を知らなくても、分かる内容になってます。

なお、短編として一話一話で独立し、区切りがついており、時系列に進むわけではないので、どの話から読んでも大丈夫です。

挿絵(By みてみん)

夫婦愛、家族愛、ほのぼのな日常生活を描きつつ、日本の社会問題を少し織り交ぜながら、ちょっと悪乗りしつつもコメディタッチで描く短編集です。

日本の文化や四季折々の習慣にも触れていければと思ってます。


今回のお話は「聖夜」です。理沙と静也夫婦のクリスマス。性夜となるのはお約束。そこに至るまでの小さないざこざとは・・・

http://ncode.syosetu.com/n2006cl/1/

挿絵(By みてみん)



また、本編と同じように、できるだけ挿絵イラストをつけていきたいと思ってます。

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