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旧作  作者: hayashi
シーズン2 第3章「拉致」
46/114

サギーの思惑

 本格的な夏が訪れる前の雨の季節。

 この頃、ルイは誰かに尾行されている感覚を味わっていた。いつになくルイに緊張が走る。


 自宅まであと少しというところだった。

 霧のような小雨が降り、夜の帳が下りる中、人通りのない道を急いでいたルイの横にバンが滑り込み、停車した。あっと思った時には、複数の男たちによってバンの中に連れ込まれていた。口を塞がれ、目隠しをされる。首にかけていたペンダントが取り上げられるのが分かった。

 腕に針が刺さった感触――注射を打たれたのだろう。そのうち意識を失った。



 ――ルイが気づいた時、そこは音の聞こえ方から、どこかの大きな倉庫の中のように感じた。

 埃臭く、潮の香りが漂っていた。海の近くのようだ。


 口は何かで塞がれていたため、声を発することができなかった。手足も縛られており、身動きできなかった。目隠しもされたままだったが、周囲に数人の人の気配を感じた。


 数人の男が話している声が聞こえた。

「ポケットも調べましたが『B班』に預けたあのペンダントのほかには、特に怪しいものは身につけていないようです」

「さきほど『C班』より連絡入りました。ルイ・アイーダの携帯電話をチェックしたところ、これといって定期的に誰かに連絡をとっている形跡はなかったとのことです。ただし削除されたものを復元すれば、そういった形跡が出てくるかもしれません。携帯電話をチェックした後、すぐに電源を切ったので、まだ詳しくは調べていないとのことです」

「定期的に誰かに連絡をとっている可能性については想定内だ。とりあえず連れて行け。こっちももうすぐ出航だ。早く運び出せ」


 目も口も塞がれ、全ての自由を奪われたルイはただじっとしているしかなかった。


  ・・・・・・・・・・


「……やはり発信機を……ええ、作戦通り、そのペンダントは別のシベリカ行きの船の荷物に紛れ込ませておきなさい。うちの会社以外の船ならどこでもいいわ。ご苦労様」

 自宅で待機していたサギーは電話を切った。ルイをシベリカへ送ったその後の手筈は現地の仲間が整え、処理してくれるはずだ。


 サギーはうすく笑った。

 ――思ったとおり、ルイはペンダントを装った発信機を身につけていた。ルイはこうなることを予想し、予めセイヤとリサに相談していた――となるとルイの捜査にセイヤとリサが加わる可能性が高い。でも、こちらはそういったことも想定ずみよ――


 そう、ルイを社会的に葬るシナリオを、サギーはこのように描いていた。

 ――ルイ・アイーダはアリア人と結託し、密かにシベリカへ渡り、シベリカ国へ対するテロを計画したとして、シベリカ国で捕らえられ、裁判にかけられ、終身刑にされる。そしてトウアで起きた『地下鉄中央駅爆破事件とマハート暗殺未遂事件』も、シベリカを敵視するルイがシベリカ国に罪をなすりつけ、シベリカを貶めるためにやったのだ、と。


 ルイとつながっているアリア人による『反シベリカ地下組織』は実際にトウアに存在するのだから、そのことが明るみになれば、確固たる証拠がなくても、ルイが関与したという疑いをトウア国民に持たせられる。


 ルイの信用は失墜することだろう。今までの発言も信用性をなくし、シベリカ国は『ルイ・アイーダによって悪に仕立てられた被害者』となれる。邪魔なルイをトウア社会から遠ざけることもできる。まさに一石二鳥だ。


 ちなみに『ルイを筆頭とするアリア人地下組織』の存在は、つい最近シベリカ工作員らが嗅ぎつけてきた。『反シベリカ活動』のための組織だろうから、本当ならば壊滅させたいが、トウア国を弱体化させる工作活動が優先される。工作員も人員が限られており、そう多くの活動はできない。それに、頭のルイをつぶせば、アリア人組織も自然に崩壊するだろう。


「ルイ、あなたが悪いのよ……そう、戦おうとしなければ、立ち向かわずにおとなしくしていれば、こんなことに巻き込まれなかったのに。まさにリサの兄と一緒ね」

 サギーは遠くに目をやった。


 ――別に、ルイに個人的な恨みはないわ。ただ、戦うという選択をしたのならば、負けた時にはその代償を払うことになるのよ――



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