プロローグ①
むしゃくしゃして書いた。後悔はしていない。ご都合主義、矛盾、誤字脱字多数の予定。教えてくだちぃ・・・
「ああ、冷たいなあ・・・寒いなあ・・・」
若い男が独りで呟く
「俺・・・このまま死ぬのかな・・・?」
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榊原雄二はずっと1人だった。
援助交際をやっていた母は15歳で雄二を生み、施設前に捨てた。
当然、父親が誰かなんて知る由もない。
施設は最悪の環境だった。
国から補助をもらいながらそれを施設の子供たちには還元せず全て施設長が着服した。
食事は1日2食。就業支援の名目で内職を強いられノルマを課せられる。
ノルマが達成出来ない子供は反省会という名の体罰を容赦なく加えられた。
0歳のときからそこで育ち、幼い頃から体罰を加えられていく内に感情は表に出なくなっていった。
雄二はそこで誰とも関わらず黙々と過ごし16歳で施設を出た。
出ていった子供にも残った子供にもなんの感慨も抱いていなかったから淡々としたもんだった。
働いて稼ごうと思い、いろんな職業を転々としたが接客業は愛想がないという理由ですぐクビになる。
他の仕事も職場に馴染めず短い期間でやめた。そのうちドヤ街に住むようになり日雇いでなんとか食い繋ぐようになった。
しかしそこで初めて声を掛けられた。
「なあなあにーちゃん、うちの店で働いてみないかい?」
ふと顔をあげるとチャラい恰好の若い男だった。若い男は悠理と名乗った。
「にーちゃんいくつ?18歳以上なら働けるんだけどさ〜」
「じゅうろ・・・8歳・・・18歳」
「よし決まりっ!んじゃ行こうぜ!時は金なりだぜ!」
男はにかっと笑って雄二を連れてネオン街に入って行った。
「ここが今日からにーちゃんが働く場所だ!」
見上げるほどの建物、豪華な扉、雄二はそこがどこか知識として知っていた。
女性とお酒を飲んで、会話して、お金を稼ぐところ。−−−−ホストクラブ。
「あの悠理さん。俺、こんなに汚いし会話も出来ないんだけど?」
「だいじょーぶだいじょーぶ、なんて言うの?おまえってクールビューティーってやつ?あれ?これって男にも適用されんの?あと身なりは店の制服とりあえず着とけばいいよ!俺を信じろ!こういう仕事やってるから人を見る目はあるつもりだぜ?」
雄二は初めて他人から認められた。舞い上がった。がんばろうと思った。
店に入り、体を拭き、コロンを振り掛ける。髪型を整え、着替えてホールに出ると20人ほどの男の群れ。
「にーちゃん、こっちこっち!自己紹介よろしくぅ!」
悠理が雄二を手招きする。どうやら悠理はこの店でも偉い立場にあるようで男たちの前にいる。
「榊原雄二です。悠理さんに連れてきてもらいました。よろしくお願いします」
「にーちゃん、ゆーじっていうのか、初めて知ったわ。あははははは」
ケラケラと笑う悠理に男たちも苦笑しながら「また拾ってきたんすかぁ?」と冷やかし声を掛ける。
「こいつはいずれ俺のところまで登ってくるぜ?間違いねーって!このクールな顔立ちとアンバランスな幼い雰囲気がおまえらわかんねーかなあ?ところでおまえの源氏名はどうする?」
「ゆーじでいいっす」
「OK!んじゃゆーじよろしくなっ!」
雄二がその店で人気ホストになるのに時間が掛からなかった。元々のベビーフェイスに影のあるクールさを持っていてそれに惹かれる女性は数多くいた。
NO1ホストだった悠理と遜色ない売上を達成し、住居もドヤ街の雑魚寝から高級マンションになった。
そして雄二は唯一の趣味と出会う。読書だった。貰った給料でラノベを買い漁った。なぜラノベ?と悠理に聞かれたことがある。雄二は当たり前のような顔で答えた。
「だってこんな風になれたらなあと思うから」
ラノベの中では学園も異世界も主人公には仲間がいた。自分も仲間がほしかった。悠理はよくしてくれるが頼りになる先輩であって仲間ではなかった。店の中ではNO2になった雄二への嫉妬の目があり、とても仲間なんて呼べなかった。
「ふーん、なんかよくわかんねえけどそうなったらいいな!」
笑いながら答えてくれていた悠理がある日いなくなった。交通事故で死んだのだ。雄二は悲しかったが泣けなかった。
そして後悔した。悠理にお礼を言えなかった。最後の最後までお礼を言えなかった。こんなによくしてくれて、救ってくれたのに何一つ言葉に出来なかった。自分は薄情な人間だと思った。こんな薄情な奴に仲間なんて出来るはずがないと思った。
NO1だった悠理がいなくなり、雄二がNO1になった。やっかみは一段とひどくなり、客の前でも嫌がらせを受けた。今までは悠理に庇ってもらっていたと初めて気付いた。
そしてオーナーに呼び出されて詰問された。18歳未満がバレたのだ。おそらく雄二の人気を妬んだ誰か、もしくは全員がオーナーに垂れこんだのだ。そしてそのままホストクラブをやめた。
何もする気も起きなかったので四六時中ラノベばかり読んでいた。そして家賃も払えなくなりマンションを追い出された。今更日雇いにも戻れず冬の街を宛てもなく彷徨いそして倒れた。
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「どうせ死ぬのなら転生とか起きればいいのに・・・ははっ・・・無理か」
自分の幼稚な考えにおかしさがこみ上げる。体温が無くなっていくのを実感する。
(もう声も出ないや・・・まあいっぱいラノベも読んだし、あの世で悠理さんに会えたら嬉しいし別にいっか)
冬の寒い夜に榊原雄二は死んだ。