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パステル。  作者: q69p
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ごん、ご、ご、ごん、ごん、……ごん、ごん。

先生の家のノッカーを、決められたリズムで叩く。

こうしないと、中に入れてくれないのだ。

「お〜う、入れぇ!」

扉の奥から、少しくぐもった声が響く。

「よい、しょ。

おっじゃましまぁす!」

一旦少年を受け取って、ヒナに扉を開けてもらう。

無駄に荘厳な扉は、私の力では開けられない。

必然的に、私が先生の家に行く時は、ヒナが先生の家に行く時だったりする。

「先生、どこにいるの?」

無駄に広く、且つ無駄に煌びやかな家の中を進む。

広さゆえに、充分に日光が行き届いておらず、薄暗さをシャンデリアのロウソクで、さらに薄めていた。

先生も、わざわざこんなに住みにくそうな家を選ぶなんて、変わっている。

「先生じゃねえよ。

セン・セイだ。

親しくセンと呼ぶか、他人行儀にセイ氏と呼ぶか、どちらか選べ」

丁度私達の真上から、声が降りてくる。

まさか。

その真上を見上げると、シャンデリアに足をコウモリのように引っ掛けて、黄緑髪の女性が私達を見下ろしていた。

「とうっ!」

鋭い掛け声と共に、先生がシャンデリアから足を外し、クルクルと前転しながら落下する。

シュタッ!

着地も綺麗に決まった。

「あたし、参上!」

先生が住んでいた世界には、ドヤ顔という種別の表情があるらしい。

成る程、今の先生は、まさしくドヤ顔だ。

パチパチパチ。

ヒナが歓声をあげ、手を叩く。

「ふふん。やっぱ、初登場はクールに決めないとな!」

「なんの話しですか?先生」

「大人には、いろいろあんだよ。初登場に影が薄いと、すぐに読者に忘れさられちまう…。

ってか、先生って呼ぶなっつったろ。

あたしゃ、そんな高尚な生きもんじゃねぇよ。

親しくセンと呼ぶか、他人行儀にセイ氏と呼ぶか、どちらか選びたまへ」

「じゃあ、間を取って先生で!」

「同意」

「どことどこの間だよ!

ってか、本当に間だったら『・』になっちゃうだろ!

なんて読むんだよこれ」

中点(なかてん)又は中黒(なかぐろ)と読むらしい」

このあたりで先生が、私が何かを背負っていることに気がつく。

「ところで? 今日はなんか収穫あったん?」

そうだった、これが本題だった。

私は背中に背負っていた彼を、先生の前に差し出した。

「はえ!? ええぇええ?」

漫画のような表情で、先生が驚く。

「私達も、驚いた」

「うん。 まさか人を拾ってくることになるとは、思わなかったよね」

「……こいつと、何か、会話はしたのか?」

「……ちょっとだけ」

「………どうだった?」

「………やっぱり私達と同じく、他の場所からここに来たみたい」

「はあ。 なあんだ。

ここの先住民だったら、何か聞き出せないかと思ったんだが」

「それでも、私達と同じ人間を見つけただけ、大きな進歩だと思う。

それに、多分この子、男の子だ」

「あ、いや、そりゃ見りゃわかるよ」

先生が男の子を一瞥する。

「もしかしたら、見た目だけかもしれないかもかも?」

ヒナも男の子?を一瞥する。

なんだか悔しいので、私も一瞥してみた。

とはいっても、彼が崩れないように支えている都合上、どうしても後頭部しか見えないのだが。

………………。

全員黙ってしまった。

「……」

「…………」

「…ところで、よう」

こういう時は、必ず先生が真っ先に沈黙を破る。

大人の役割り、と、先生は言っていたが、毎回なんとも気まずそうな表情で何かを喋り出すので、ただこういった空気が苦手なだけなのかもしれない。

「ユーリがさっき言ってた、『それに、多分この子、男の子だ』って、どういう意味合いでの『それに』なんだ?」

「私達は、ここにいる人間を私達以外に知らなかった。

私達は全員女性。 これは間違いない。

これでは、私達の寿命がここで尽きてしまった場合、ここに人げ…」

「わ、わかったわかった! もういい。

大人しそうに見えて、案外そういうのに耐性あるよなお前」

先生が頬を染めて、手をぶんぶん振り回し、私の言葉を遮る。

ヒナがやると、きっととびきり可愛く見えるのだろうが、先生がやると、なんだか色っぽい。

私がやると、どうなるんだろう?

「あはは。 先生は耐性なさ過ぎだよう」

「ご、ごほん。 それは兎も角だ。

ユーリ、お前、そんなに長い時間ここにいるつもりなのかよ?

ここで、人生終わっちまっても、いいのか?」

私は、少しの間、自分の返答を待って、その答えを先生へと伝達した。

「ここにいたい」





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