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パステル。  作者: q69p
3/6

3色目


ロボットと刺し違えて、灰色の髪をした男の子がバタリと倒れる。

私たちを守ってくれたのだろうか?

「ほ、ほあえ〜?」

突然いろいろな事が起こると、ヒナはこうして惚けてしまう。

これがまた、かわいい。

ついつい、ぽうっとヒナを見つめてしまう。

……幸せ。

私まで、惚けている場合じゃない。

男の子の口に手を当ててみると、空気の流れを感じた。

よかった、気絶していただけのようだ。

男の子を抱きかかえてみた。

男の子は思った以上に細くて軽くて、まるで風にでものって、ふわりと何処かへ飛んで行ってしまいそうな、そんな印象を受けた。

「ヒナ、起きて。

先生のところに行こう」

「はう……うん」

電気のことや、さっきのロボットが何故私達を追いかけてきたのか、そもそもこの男の子はなんなのか。

気になることは山積みだけど、この子を放っておくわけにもいかない。

とりあえず、先生のところに置かせてもらおう。

私達はロボットがやってきた壁と壁の間をくぐり抜けた。


「ヒナ、そろそろ、交、た、い」

私はぜぇぜぇと肩で息をしているようだ。

疲れ過ぎると、まるで自分が自分でなくなるかのような感覚を受ける。

「だ、大丈夫、ユリちゃん!?

すごい汗だよ!」

ヒナが私の背中の彼を受け取る。

大分楽になった。

「ユリちゃん。

どこかで休んでこう?」

「うん」

こういう時には、素直に首を縦に振らせてもらった方がいい。

ここに来てから学んだことだ。


駄菓子屋。

私が前に居た世界では、そう呼ばれていた。

今私達の前にあるそれは、そこでのそれとは少し違っていて、店の外側には車輪が付いていて、店の中にはそこだけ新品の、なんともチグハグなソファーが置かれている。

それでも、古くからあるもの独特の、暗い色合いの木材や、チリンと涼しげな音を鳴らして、風に揺れる風鈴が、私の記憶の中のそれと被って見えた。

始めてこれを発見した時は、二人で押して家まで運ぼうとしたっけな。

あまりにも重すぎて、ピクリとも動いてはくれなかった。

「ユリちゃん」

冷えたビンが頬に当たる。

「つべたっ」

にひひとヒナが笑う。

「飲ませてあげる」

大きなソファーに、仰向けに寝転がったまま、私は口を開ける。

トクン、トクン。

少しずつ、ラムネの味が、感触が、水分が、体に染み渡っていく。

おいしい。

「ねえ、ユリちゃん」

自分の分と私の分の、殻のビンをカウンターの端に置きながら、ヒナが口を動かした。

もう十七本目か……。

目を動かして、青と緑と紫を混ぜたような色の、ビンの本数を数えながら、ヒナの言葉の続きを待つ。

「この子、どういう子だと思う?」

この子とは、私の隣で寝ているこの男の子のことだろう。

横向きに体を倒して、男の子と向き合ってみる。

背は私よりも高そうだけれど、顔のパーツの一つ一つが幼さを主張していた。

「ヒナはどう思う?」

「私は……。

この子は私達を助けてくれたけど、白馬の王子様とか、そういう感じの子じゃないと思う。

なんとなく、だけどね」

なんともヒナらしい回答だ。


水色の地面を歩いていく。

「この男の子は、きっと、私達と同じなんだと思う」

「その心は?」

ヒナがおどけた調子で聞き返してくる。

ヒナが昔居た世界の文化には、謎掛けというものがあるらしい。

「きっとこの子も、もともと住んでいた世界から、突然ここにやって来た。

そういう状況的な意味での同じもあるけれど、あのロボットに向かって走って行く時のこの子の表情は、外に出て、不思議探しをしている時の、私達に良く似ている……気がした」

全く同じかどうかは、少し自身が無い。

いや、自身があっては困る。

普段から、あのような危ない表情をしているとは思いたくない。

ヒナは私の言葉を受けて、歩きながらううんと考え込む。

「…………男の子、かぁ」

「うん?」

「本当に、男の子なのかなぁ、なんて思ったりして」

「えっ?」

「…そうだったら…いいのになあ」

一体、どうしたのだろう?

ヒナが暗い顔をすることなんて、あってはならない。

けれど、一体それがどういうことなのか、ヒナに聞く勇気もなくて、結局臆病で鈍感な私は、口を塞いで歩いて行く。


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