-物語1-おわりエコー
この物語は主人公の非日常を淡々と描いた物語です。過度な期待はしないでください。
これから語る物語は神に魅せられた、否、悪魔に魅せられた者達の物語である。
そう、僕がいなくなる前の偽りの物語を
そしてこの僕、音神渚が、
この物語を丸裸にしてみせてやりましょう。
あの懐かしい十五回目の春休みの事。
僕がまだ嘘をつかなかった頃の話。
そして、僕がまだ偽わらなかった友達の話。
それじゃあ始めるとしようか、僕の偽りの物語を。
僕の消える前の物語を。
あと最後に……僕は嘘つきだ、友達の為なら自分を偽ることもできる。友達の為なら嘘を普通に言う。
ー3月27日春休みー
・0:23
「ねぇ、君は主人公?」
いきなり声がした、そう、いきなりだ、いきなり、急に、突然。
さっきまで『何も』いなかった、いるはずもなかった場所から、音もなく突然。
「俺が主人公だったら一話で物語が完結しちゃうよ」
何故そう言ったのかは覚えていない。
何故当り前のようにそう言い返したのか、こいつは『何』。
声のする方向を見た瞬間……
「いいや君は『主人公』だ」
「ッ……⁈」
声が出なかった。
そして俺の物語が終わった……
ー3月26日春休みー
6:14
「なんで僕がこんな時間に起きないといけないんだ」
そう呟いた。しかも猫にだ、しかも僕の猫ではなく野良だ。
「ミャー」
何故野良猫に向かってこんな事を呟いているかというと。
今朝、突然大きな音が聞こえ、驚き、ベットの上から転げ落ちてしまい、目が覚めたので仕方なく音の現況を探している最中に猫にひかれかけたからだ。
いや、正確には猫が横から飛んできたのだが
、しかも黒猫、ブラックキャットだ。
そんな事を考えていると
「すまんがそれは俺の猫だ」
なんだ、野良では無いようだ。
「そうですか、いきなり横から飛んで来たもので」
「そいつの癖なんだ」
「……そうでしたか」
どんな癖だよ!と、言いたい。横からいきなり人をひく癖を持った猫がいてたまるか。
言うべきか、言わないべきか……
「すまんが急いでいるので」
「……はぁ」
行ってしまった……だがまてよ、あいつは確か、紅神……紅神海渡。
同じ隠璽目中学二年一組の紅神じゃないか。
紅神海渡、成績優秀、頭脳明晰、無病息災、容姿端麗。顔は中性的ではあるが、整っていて、美少年っていう感じだ。
しかも生徒会長に先生が推薦したのだが、『俺はそんな器でわありません』の一言で断ったらしい。
その先生は半年間寝込んだらしい。
先生……貴方は馬鹿ですか?
紅神は先生が寝込んだのを自分の所為だと慈悲し、仕方なく生徒会長に立候補。
紅神……お前は何も悪くない。
そして先生は半年後それを聞いて『私は彼しか生徒会長はありえないと思っていたのだよ……ふっ、紅神……いや、生徒会長も成長したな』などと気持ち悪い発言をしており、『俺の役目も終わったし、そろそろ俺も現場に復帰するかな』などとドヤ顔でそう言った。
ドヤ顔やめろ、黙れ。
まあ、そんな紅神も恨みをかわないわけでは無いわけで。
体育館裏に来いと呼ばれ、馬鹿正直に向かった所そこには不良が五、六人いたわけで。
可哀想に紅神はそこにいた不良たちを全員ぶっとばして、改心させたらしい。
哀れ不良、そして馬鹿な生徒会長。
まあ、そんな彼だけど……
僕が思うに彼がこの物語の主人公だとおもう。
今会ったのも偶然ではなく、この物語が彼を僕に会わせたのだ。
主人公に背景は必要だからな。
という事は、僕の役目はもう終わりなのだろう。
猫を拾った少年か。
まあ、それも悪くない。
無い物を欲しがっても虚しいだけだ。
物語にでれただけ有難いと思う。
だがどうしたものか?
音のした場所は何処にあるんだ?
う〜ん、当たって砕けろだな。
「まったく何かありそうな一日になりそうだな」
などと僕は意味深にそう言った……この後起こる悲劇の事も知らずに……
「てか、本当に知らないんだけどね」
最後まで読んでくれた方ありがとうございました。
エコーとは反響音という意味です。