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9.皿は割れて俺は折れた

久々の更新。期間開けたくせに超短いです。スイマセン。

 パリイィィィン――!


 「……」

 (くっ……くくく)


 もう何度目かもわからないガラス製の物が砕け散る音が室内に響くと、心の中でも何度目とも知れぬ漏れるような笑い声が聞こえてくる。


 「……なぜだ」


 本当なぜなのだろうか。

 なぜ、なぜ皿洗い程度ができないのだろうか。


 (くくく……実に愉快極まりない光景じゃのう)


 心の中でエルディアが何か言っているようだが、無視して今の状況を説明しよう。

 現在俺達は冒険者ギルドで受けた雑用の依頼を実行中。もう四つあるうちの三つは終わっていて、状況は俺は成功ゼロでエルディアは二つ成功で俺が負けている。もうどうあがいても俺の負けなのだが、これでは俺の気が収まらないので最後の依頼――皿洗いを一生懸命にしているのだ。

 んが、一枚たりとも洗えていない。もちろん、一人暮らしだったので皿洗いをやったことがないわけではない。洗い方もきちんと覚えている。

 なら、なぜ洗えていないのか。

 答えは簡単。滑って落とさない様に強く掴んだらその瞬間割れてしまうからである。

 つまり、そもそも洗うという行為すら出来ていないのだ。


 「ただ強めに握っているだけだというのに、なぜだ?」


 疑問は尽きない。

 そういえば、もう一つの依頼の方でも不可解なことがあった。

 もう一つ俺がやったのは、穴があいた屋根の穴のところを補強するというものであった。屋根に登って板を穴に合わせて釘を打つという、単純極まりない仕事だ。

 しかし、釘を打ったところで何がどうなったのか。屋根の半分ごと破壊してしまったのだ。

 あの時も軽くトントンした程度であったはずなのにな。


 (力みすぎなんじゃよ)


 と、そこで疑問ではてなマークを三つほど頭上に浮かべていた俺に聞捨てならない言葉が聞こえてくる。


 「ちょっと強めにもっただけだろうに」


 これは断言できる。

 なぜなら指が白くなるほど強くは握っていないからだ。

 が、そんな俺にエルディアはやれやれといった感じで解説を始める。


 (よいか。今のお主は妾――つまりは吸血鬼となっておるのだ。当然その力は人間よりも遥かに勝っている。感覚上は人間であった頃と同じだとしても、今その手に込められている力は小石を粉々にするほどじゃ。要は、お主は力加減が全くできてないということじゃな)

 「いやいや。それだったら今まで持った剣だとかはなんで壊れなかったんだよ。しっかり持ってたがそんなこと起きなかっただろ?」

 (力加減ができてないということは、今自分がどのくらい力を加えているかわかっていないということ。つまりお主があの時持った剣が壊れなかったのは全くの偶然じゃな。まあ、ブロードソードはまだしも連鎖刃とやらはそこまで脆くはなかっただろうが)

 「……」


 確かに強度十のブロードソードなんかよりも、五十の連鎖刃の方が硬いが。

 っていうか、知ってたんならなぜ今まで黙っていたし。あれか? 勝負を有利に進めるための策ですか? 汚いぞエルディア。


 (そんな浅はかな考えなどするか。妾も今初めて分かったのじゃ)

 「よし。じゃあこの勝負は無効ということで――」

 (それはそれ、これはこれ。じゃ)


 っぐ、その名言を言われたら反論できんじゃないか。


 (と、いうわけだから決めていなかった罰ゲームじゃが)

 「勝敗が確定したあとに決めんな!」

 (当然。口調を妾に合わせてもらうぞ。まあ、心の中での会話なら元の口調でも許そう)


 わかってたけどやっぱり口調かい!

 よほど俺俺と喋る自分の姿がお気に召さなかったのか。

 でも外じゃエルディア口調で内では男口調って、なんていうか超面倒だな。どっち一方にしないと喋り方が崩壊しそうだ。

 だが勝負をして負けた以上相手に従うのは当然。男に二言は無しだ。

 と、こんなところでついつい理想の男を出そうとする俺であった。


 「あ、でも妾口調だけは――」

 (聞こえんな)

 「だめっすか」

 (だめじゃな)

 「そうか……わかった。俺、いやワラワは見事エルディアをロールプレイしてみせようゾ!」


 俺も交替するたびに口調が変わるのが可笑しいとみられることぐらいわかっとるのですよ。だからここはもう割り切るしかない。本当は泣きたくなるほど悲しいけど、でもこれ現実なのよね~。


 (若干硬いが、その粋やよし。が、横道にそれすぎてしまったな)

 「ん?」

 (後ろじゃ。後ろ)


 エルディアに言われるまま背後を見ると、そこには普段の人の良さそうな顔を悪鬼のごとく歪めたここ――実はここお偉いさんの厨房だったりします――のメイド長さんの姿が。


 「弁償していただきますからね?」

 「……はい」

 

 俺のポケットマネーから金貨五枚が消えた。

 まあ、痛い出費というわけでもないんだけどね。


 (これからは力の入れようも修練せねばな)

 「そうジャナ……」


 俺課題が一気に増えた。


 あ、深層心理だけはきちんと男言葉で語るつもりだ。

 エルディア口調なのはあくまで人としゃべる時だけだからな。

 さて、今回で姫鬼の口調変更が確実となったのですが勿論すぐにスラスラとはしゃべれません。いろんなところでボロが出まくります。演じきってみせると豪語してますがただの虚勢です。

 次回からは次のところに向かいながら姫鬼の修行というふうにしていきたいと思ってます。

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