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起動したてのアンドロイド  作者: 葉藻阪 松園
第一章:家族になったアンドロイド
8/30

久美は心をインストールする

お風呂で機体を洗浄し、久美は部屋に戻ってきていた。

食事中のターゲットの様子をもう一度電脳中枢で再生してみる。

やはり私に対して違和感を覚えているのではないのか?

そうでなければ、あの突然の苛立ちは説明できない。


報告しなければ危険であると久美は判断し、鞄から通信機を取り出しシードのアドレスに発信するが、忙しいためか今回シードが出るのに時間がかかった。




「待たせたな、ムーン。別の案件で、立てこんでいた」


別の案件?


別の案件と聞き、久美はふと自分以外にも同じような役割のアンドロイドがいるのだろうかと疑問に思って質問する。


「当然だろう。人間は、強欲でこずるいからな。次から次へと問題を起こしてくれる。

それでは、今日の報告を聞こう」


本当に忙しいみたい。手短に済まそう。


今日の出来事を順番に話していき、ターゲットへの第一印象が悪く嫌われてしまったことと、その原因が認識阻害電波改がうまく機能していないために久美に違和感を覚えているのが原因ではないかと最後に告げる。


しばらく沈黙が続いた後、シードが一つの提案をしてくる。




「では、認識阻害電波改だけでなくハート・プログラムをインストールしてみるか」


ハート・プログラム? 何なのだろう、それは?


初めて聞いた名前だったため久美が聞き返すと、シードはハート・プログラムの説明を始める。


「ああ。

心を模擬的に再現したもので、状況に応じて、顔や手や足の動きといった外部形態や心拍数そして肺活量の変化などを引き起こすプログラムだ。

最初は、喜怒哀楽の四つの単純な表現しかできないが、人間を観察し、情報を蓄積することで、他の複雑な感情も再現できるようになる。

つまり、人間の行動を記録し、まねる機能だと思ってもらっていい。

まあ、人間の子供も同じように感情が育っていくらしいから、不自然に思われないだろう」


心の再現…。人間と同じ…。


アンドロイドでも感情を持つことができる。

意外な言葉が耳で観測されたため興味をひかれ、シードの話の続きを集中して聞いていく。




「人間の持つ感情はたいてい全部取得できるぞ。

近くにいる人間に好みや感情表現が似てくから、気に入られる可能性も高くなるだろう。

人間は、自分に共感してくれる人間に好意を抱くらしいからな」


全ての感情を取得できる。

いいことだらけな気がするが、なぜ今まで搭載されていなかったのかな?

ふとした疑問。当然の疑問が口から放出される。


「なぜ、今まで私の機体に搭載されていなかったのですか?」




シードは淀むことなく返答してくる。


「弊害があるからだ。

ハート・プログラムをインストールすると、最も影響を受けた人間の映像が頻繁に電脳中枢でフラッシュバックされるために、その人間を強烈に意識してしまう。

一般的には、ハート・プログラムの暴走といわれる現象だ。

まあ、一部のアンドロイドは、人間でいうところの盲目的な恋愛感情というものに酷似していることから、心酔現象とか呼ぶようだ。

過去に、ハート・プログラムの暴走により、ターゲットの人間のことしか考えられなくなってしまい、任務を失敗したアンドロイドもいた。

もし、インストールするのであれば、そうならないように十分気をつける必要がある」


盲目的な恋愛感情?ハート・プログラムの暴走?

なるほど。それなら仕方ないかもしれない。

とても危険なプログラムであるのは確かだろう。


ただ、ターゲットの違和感をなくすには必要なプログラムであるのも確かなような気もした。

まずはインストールしてみたい。

しばらく使って考えればいいかもしれない。

シードにプログラムのインストールする旨を告げる。

すると、一番簡単なインストール方法を教えてくれた。




「通信機をそのまま耳に当てているだけで構わない。

お前の機体と今使っている通信機は、無線で繋げられるから、通信機を経由してプログラムをダウンロードできる。ダウンロードしたら、自動でインストールされるから心配するな。

では、プログラムを送信するぞ」


シードの指示通りに耳に通信機を当てていると、甲高い音が通信機から発せられる。


痛い。キンキンと耳が痛い。

なぜインストールに痛みを伴う使用にしたのだろうか?


耳鳴りがした後に電脳中枢に小さな痛みが走ったが、暫くすると痛みが引いてきた。


どうやら、インストールが終わったみたい。




[インストールが成功したかどうか確かめるから、そのまま通信機を耳に当てておけ」


シードの命令通り通信機に耳をあてて、インストールが成功しているかどうかをシードが確認している間、再度ハート・プログラムの暴走に十分注意するように促された。




「どうやらうまくいったようだな。

人間と接触すればするほど、人間の感情を得ることができる。

観察対象へ積極的に話して、信頼関係を結ぶようにしろ」


シードはそう命令した後、ハート・プログラムの使用報告は後日必ず行うように久美に告げ、通信を終わらした。


信頼関係…。私にできるだろうか…。




黒い通信機を耳から離す。


最初に得られる感情は何なのかな?


電脳中枢にいろいろ浮かんできたが、考えても仕方がないという考えにいきついた。





2011年 07月 26日―投稿

2011年 08月 04日―改定―迷惑かけます


【お知らせ】

読みにくいと言われたプロローグ改良しました。

タイトルも。

最新版の認識阻害電波→認識阻害電波改になってます。

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