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起動したてのアンドロイド  作者: 葉藻阪 松園
第一章:家族になったアンドロイド
6/30

久美は少女の部屋で思う

ターゲットが食事の途中からずっと口を閉ざしたままだった。

彼の妹の部屋を私が使うことを知ってから。


これから、うまくやっていけるのだろうか。

彼の私への印象はいきなり悪い状態らしい。




夕食後に届いた車いすに乗ってキッチンを出る。

廊下の一番奥にある凛音と書かれた部屋の前までターゲットの後ろについていった。

これが、私がこれから過ごす部屋。


「この部屋だよ」


扉に掛ったピンクのイルカの板に凛音の文字。

人間の女の子らしい可愛い名前板。




ターゲットが扉を開ける。

扉の動きに合わせてイルカが揺れる。


まるで、ここが彼女の部屋であると主張しているみたい。




「ありがとうございます」


ターゲットが開いた扉を抑えている間に、彼の脇を抜け、部屋に入る。


ピンクのベットカバーに枕元にピンクの服着たネズミのぬいぐるみ。人間の女の子の好む部屋。それが視界に入ってくる。




ベットの横の机の前まで移動し、持ってきた茶色の鞄をその上に置くことにした。


パタンと扉の閉まる音。


振り返ると彼と眼が合う。何を話せばいいのか分からない。電脳中枢が混乱してうつむいた。


ターゲットはそんな様子に憤慨したのかもしれない。

無言で足元に散らばっていたぬいぐるみを棚の上に片付ける。

そして、すぐに、ほんとにすぐに、出て行ってしまった。




「不便だと思うなら、いつでも言ってくれ。じゃあ、お休み」


えっ…。あっ…。


出て行く前にターゲットはそれだけ告げて去っていく。

慌ててお礼を言おうとするが、ありがとうを言う前に扉が閉じられてしまっていた。




完全に出会いは失敗に終わってしまった。

これから信頼回復しなければならないらしい。

この問題を電算処理で解こうとしたけど答えは出てこなかった。


答えは出なかったが孤児院にいた時に隣の部屋の少女がしていたことを思い出し、ぬいぐるみに尋ねてみたがやはり答えは返ってこないようであった。




ふと棚の上にターゲットとその姉、そして自分によく似た少女が仲良く手をつないでる写真が観測された。


写真に写ったピンクの服の少女の目は、私では彼女の代わりにならないと言っているように見えた。

アンドロイドでは家族を持てないと。




一瞬電脳中枢が停止していたのに気付き、不思議に思いながら再起動する。


家族とは手を連結させるものだという情報を電脳中枢に書き込み、この任務が終わった後にシードが家族を用意してくれるという言葉を思いだす。


アンドロイドでもこんな風に笑うことができるのだろうか?

今度は、そんな疑問が電脳中枢を駆け抜けた。




写真の少女の黒い瞳と目を合わす。

突然、隣の部屋の扉が乱暴に閉じられた音。ターゲットの部屋だろう。その直後に、ベットに飛び込む音がした。


もしかすると彼は私のことを不審に感じていら立っていたのでは?

認識阻害電波改が予想以上にうまく作動していない可能性があるのでは?

不審なモノが妹の部屋を使うことを嫌悪しているのでは?

そんな仮説が電脳中枢を支配する。




これは、シードに報告しなければいけない。

そう結論付け、通信機を取り出そうと鞄を開くと、部屋の扉が開いて突然黄色の服の女性が飛び込んできた。


「お風呂開いたわよー」


慌てて茶色の鞄を閉じる。


どうやら彼女はお風呂に一緒に入らないかと提案にきたらしい。

そこで、いつも一人で入っていた旨を伝える。




「危なそうだったら、すぐ呼ぶのよ」


なぜ目を潤ませてるのかな…。


彼女は涙目の視線を向けてくる。この間、院長が初めてのお使いを見ていたときと同様の。




報告はお風呂の後にしようと判断し、洗面道具を鞄から出して、私は凛音と私の部屋から出ることにした。





2011年 07月 26日―投稿

2011年 08月 04日―改定―迷惑かけます


【お知らせ】

最新版の認識阻害電波は長すぎるのと指摘があり、認識阻害電波改としました。

その影響で、プロローグの会話を一部修正しました。

ご迷惑をおかけしたした。

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