表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
起動したてのアンドロイド  作者: 葉藻阪 松園
第一章:家族になったアンドロイド
4/30

久美はハイテンションな女性と出会う

「久美、ついてきなさい。あなたにお客さんよ」


私にお客?初めてかな…。

3年前に製造された自分になぜお客があるのだろう?


院長先生に久美はそう声をかけられて、疑問に感じたながらも、来客用の応接間まで彼女の後をついていった。




応接間に入った瞬間直立不動のゴーハが目に入る。


その隣で慌てて立った女性がターゲットの姉だろうかと、電脳中枢を落ち着かせ状況を整理しようとしていると、突然その女性に抱きつかれ頬ずりをされた。




電脳中枢が対処法が見いだせず混乱している中、頬ずりは続けられ、院長先生が咳払いするとやっと彼女の自己紹介が始まった。


「あなたの姉になった轟春香よ」


やっぱり…。 …。


予想はしていたもののかなり強引な発言に戸惑いつつ、ゴーハの方を見ると苦笑いをしているのが観測された。




「轟さん、久美が了承したらという約束では?」


という院長の言葉にそうだったかしらと彼女は首をかしげながら、久美に向かって言葉をかけた。


「久美ちゃん、私の妹になってくれるわよね。戸籍上は養女だけど。お姉さんと呼んでいいわよ」


妹…。養女…。


期待したような目で久美の方を見つめながら、久美の発言を待っている彼女にどう答えたらいいかわからず、電脳中枢をフリーズさせていると、ゴーハが横から助け船を出してくれた。


「いきなりで驚いているようですし、一週間彼女に考える時間を上げたらどうでしょうか?

ああ、失礼。私は、彼女の付き添いで三条四朗といいます。御嬢さん」


やっぱり変わった人。本当に人間なのかな…。


思った通り久美とは初めて会ったふりをするようで、彼は仰々しく演技がかった自己紹介をした。





「それがいいわ」


ターゲットの姉もその意見に納得したらしく、その日は如何に運命的出会いかを久美に語った後、再び頬ずりされて別れることになった。




+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++




その日の夜11時ごろにシードから着信があったことに気づき、孤児のみんなが寝静まっているのを確認しながら部屋を抜け出し、寝室から離れた廊下の突き当たりでシードにかけ直した。


「こちらムーンです」


「シードだ。ゴーハから聞いたよ。予想以上にうまくいっているようだな」


「はい。ターゲットの姉から養女にしたいと接触がありました」


「こちらとしては、その申し出を受けてもらいたいのだがな」


「あまり近づきすぎると危険ではないでしょうか?」


「近づかないと認識阻害電波の試験にならないからな。

家族にも分からないのであれば、最新版はかなり優秀であることが確認できる。

それにもし、万が一ばれたとしても、ターゲットを抹消すれば大丈夫だ」


抹消…。ターゲットの…。




抹消という言葉に予想以上に驚いたためか、久美は電脳中枢で次に質問すべきことを考えるが、答えが導き出せずにいるとシードは話を続けた。



「まあ、抹消するのは、専門の部隊が行うからムーンが気にする必要はない。

どちらにしろアンドロイドに寿命はないが、人間は100年も持たずに死んでしまう。

いずれ別れるのだから、早いか遅いかの違いだ」


そうなのかな…。そうかもしれない…。


「そうですね」


人間とは儚い存在なのだなと考えながら、久美は前回聞くのを忘れていた疑問をシードにしてみる。




「そういえば、私はなぜ左足が義足なのでしょうか」


「ああそのことか。理由は二つある。

一つは、この間言っていた周囲の人間とあまり接触を持っていなかったことが不自然でないようにしたかったからだ。外出していなくてもあまり疑われないからな。

もう一つは、違和感を当たり前にするためだ。

例えターゲットがムーンに対して違和感を感じたとしても、その違和感が義足になった過去のトラウマのためだと勝手に誤認してくれるだろうからな。

人間は何か理由があればそれ以上別の理由を探さないものだからな」


言われるとそうかな。そう久美は思ってしまう。


「そうですか」




「安心しろ。今回のターゲットの観測が終わったら、完全な機体に乗り換えさせてやる。

そのためにも最高な結果を期待している」


完全な機体。便利なのかな。


特に義足が嫌だとは思わないけれど…。

本当のアンドロイドの家族ができたときには考えが変わるかもしれないかな…。

そう考えて、特に断ることはやめておいて返事をする。


「はい、分かりました」





「何かあったら連絡しろ。

それと養女になった後、通信機の使用はターゲットたちに見つからないようにしろよ」


養女…。家族…。


そこでその日のシードとの通信が終了する。




明日は院長に養女の件を受けるように伝えなければ…。


そう思いつつ、孤児院の食事係を誰に引き継げばいいか候補を上げていくうちに、いつの間にか夜中の12時を過ぎていた。





2011年 07月 25日―投稿

2011年 08月 04日―改定―迷惑かけます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ