久美にとって二度目の…
【謝罪とご注意】
すいません。
治療電波の切り方は、1から2に変えました。
1.電脳中枢で治療電波オフという
2.口でアモールと呟く
理由としては、電脳中枢で考えるだけで勝手に電波がオンになったりオフになったるするのでは?と思ったからです。
途中の設定変更で、迷惑掛けてすいません。
その関係で、”久美:初めての…”と”久美:欲しくないものも得る”の話を改変しました。
落ち着く場所で考えれば良い案が浮かぶのではないかと考え、久美は夜光虫の見える海に来ていた。
しかし久美の予測とは逆の現象が引き起こされ、久美の電脳中枢では不安感が渦巻いるのが検知されていた。
もし兄の感情が魅了電波による精神の混乱であるなら…。
治療電波を使用しなければならない。
けれど、治療電波は近くにいる者への嫌悪感を増大してしまう。
つまり、私は嫌われてしまう。
しかも兄は私に好き嫌いの変動の激しい恋愛感情を持っているらしい。
なら、治療電波の影響で激しく嫌悪してしまう可能性が高い…。
つまり、かなり酷く嫌われてしまう…。
嫌われたら二度と今の関係に戻れないのでは…。
そうなると、家族でいられなくなってしまうのではないのか?
アンドロイドは、やはり家族を持つことができないのかもしれない…。
兄のことを思えば、治療電波を使用するのが当然の判断であるのは分かっていた。
ただ、それによって引き起こされる久美への嫌悪のことを考えると、心臓の拍動が不規則になり電脳中枢が麻痺していくのを感じていた。
機体の制御を取り戻すため、何とか落ち着かせようと試みる。
兄と一緒にいると安心感が生まれたことを思い出し、兄の映像を再生することにした。
しかし、なぜか彼の悲しげな表情しか再生されず、電脳中枢の混乱に拍車がかかる。
そして、足元から急激に体温が低下していくのを検知した。
機体の足や手といった先端部位の振動が抑えることができずに、次第に揺れが不規則にそして激しくなる。
その振動が心臓の拍動にも影響し始め、恐慌状態に陥った。
寒い…。
機体の胸に穴が開き潮風が吹き抜けているのを電脳中枢で感知した。
しかし、視線を落とし胸部を確認したが、何も観測されなかった。
ただ、姉の今日買ってくれた水色のワンピースが波しぶきで湿っているだけだった。
手足の振動がより激しくなり懐中電灯を手放す。
視界が急に暗くなり、振動が頭部にまでおよび、上下の歯がガチガチいって震えだした。
解決策が出せずにいると、こめかみに激しい痛みが伴いだし、さらに混乱が加速された。
ただ自分で自分の体を抱きしめ、震えを少しでも抑えることしかできなかった。
どのくらい時間が経ったのか。
その場を動けずにいると遠くから名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「久美ー」
足元に転がった懐中電灯に気付いたのか兄が駆け寄ってくる。
久美の震えている手を両手で握り締め、膝をつき目線を合わせて謝ってきた。
「ごめん。久美の気持全然考えてなくって。
これからは、家族として、兄として久美を幸せにするから」
違うの…。
謝らなければいけないのは、私の方…。
兄のお願を断ったのにこんなにやさしい…。
やっぱり魅了電波に侵されているみたい…。
ごめんなさい…。ごめんなさい…。
何度も謝ろうと試みたが口の振動が激しく、言葉にならなかった。
眼から液体が流出されているのを検知する。
涙が流れているのだろう。
これが悲しいという感情かもしれない。
そう朦朧とした状態で考えていると、兄が右手で涙をぬぐってくれた。
兄の指のぬくもりが頬で感知されると、眼からの液体の流出が加速され、さらに制御が困難になっていった。
「アモール」
電脳中枢でごめんなさいと何度も謝った後、そう呟いて治療電波を発信した。
しばらくするとなぜか少し冷静になった。
今どのくらい兄の治療が進んでいるのだろう?
どのくらい兄が私を嫌悪しているのだろう?
そんなことを考え、涙が流れるのを感じていた。
波の音と不規則な心臓の拍動。それしか聞こえない時間が経過する。
兄は右手で頭を撫で左手でしっかり久美の右手を握りしめ、深呼吸した後に再度同じ言葉を繰り返した。
「もう一度言うよ。
絶対に幸せにする。嫌がっても幸せにする。
家族として、兄として」
なぜそんなことを言うのだろう?
私のことを嫌っているのでは?
なぜ??
治療電波を発動させているに…。
嫌悪される電波を発生させているのに…。
アンドロイドが人間に好かれるはずがないのに…。
アンドロイドが人間の家族になれるわけがないと電脳中枢で何度も繰り返し唱えるが、口からはそれとは違う言葉が漏れた。
「私の家族になってくれるの?」
「お前は、とっくに俺と姉貴の妹だ。ごめん。
こんなに悲しませてしまって。ほんとにごめん」
兄の返答を感知すると涙の流速がもう一段上昇し、涙に夜光虫の光が乱反射して、視界が淡い光で包まれた。
気付いた時には勝手に機体の左手が、兄の方に伸ばされる。
兄の服を握った瞬間、機体が彼の胸に倒れこんでしまった。
兄は頭を撫でていた右手を機体の背中に移動させ、何度も繰り返しなでてくれた。ゆっくりやさしく。
心臓の拍動が強く、そして規則正しくなっていく。
その振動に合わせて全身に微小な震動が駆け巡る。
そして、先ほどまでは冷たかった涙の温度が上昇したのを感知する。
温かい…。
これはなんという感情なのだろうか?
ゆっくり、ゆっくり心臓の拍動数が通常状態に戻ってくる。
いつの間にか機体の振動もなくなり、眼から流れていた滴も止まっていた。
兄の体温と同程度まで機体の温度が上がっているのを感知する。
「ありがとう」
ぽつりと口から言葉が勝手にこぼれてくる。
それを聞いた彼は、手を背中から頭に移動させ、やさしく久美の頭をなでてくれた。
「さあ、帰ろうか。俺たちの家へ」
「はい」
兄の言葉に素直に返事をしたけれど、彼の服と左手を握り締める手は全く動こうとしなかった。
「そういや電車さっきのが最終だったな…。どうしようか?」
そう言って兄が笑っていると、兄の携帯が鳴り響く。
「うん。見つかった。うん。海。ちょっと迎えに来て」
姉さんかな…。
電話の相手はやはり姉だったみたいで、今いる場所を伝えた後、さんざん謝って兄は電話を切っていた。
「なんか。涙声だったぞ。一緒に怒られんの覚悟しよ」
兄にそう言われもう一度素直にはいと返事をする。
そのまま姉が来るまでずっと、久美の手は彼を拘束することになった。