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起動したてのアンドロイド  作者: 葉藻阪 松園
第一章:家族になったアンドロイド
23/30

連治は自称恋愛マスターに踊らされる

味噌ラーメンと餃子を10番テーブルの男性に運び、ご注文は以上ですかと尋ねると、常連の男性がラーメンの上に餃子乗はじめた。


先日幼稚園児の娘に餃子臭いから近寄らないでと幼稚園の運動会で言われた店長が、今朝餃子に対するこだわりについて熱く語っていたのを思い出す。


人生の不条理について考えていると、朝から何度となく繰り返された悩みに再び頭を支配された。




久美のことが気になるのは間違いがない。

そして、おそらく彼女のことが好きなのも間違いないだろう。


しかし、告白してもいいのだろうか?

彼女が唯の家族としての好意だけだったら気まずくなるのではないか?

その上、嫌われるのが嫌で好きでもないのに付き合うことを了承するかもしれない。

そんなことは望んでいない。




厨房まで戻ってきたが、結局結論はでず、視界に入ってきた店内に飾ってある知らない花に目が止まる。

花占いでもしてみようかとほんの少しだけ本気で考えていると、店長のどなり声が飛んできた。


「轟!轟!

8番テーブルにこれ持ってけ!

さっきから、ボーっとしすぎだ!

昼時じゃないからって気を抜きすぎるな!!」


やはり、今日は機嫌が悪いようだ。

運動会事件が相当こたえたのだろう。


素直にすいませんと謝って、急いでレバニラ炒めと唐揚げをトレーに入れ、8番テーブルに運んで行く。

とりあえずバイト中は考えるのをやめにすることにした。




バイトが終わって唐揚げ臭い店のロゴ入り制服を脱いでいると、更衣室で休息中の先輩が声をかけてきた。


「よう、お前が考え事って珍しいな。どうしたんだ?」


[海斗先輩…」


「大したことじゃないですよ」


「女関係か?」


この人はそういう所は鋭いんだよな…。


「そんなとこです」




「なんだよ。5股まで成功したことのあるおれに相談してみろよ」


「それがばれて彼女その2にこの店まで乗り込まれてましたけどね…」


「その後仲直りしたさ」


相変わらず浮きより軽い人だな…。


そう思いながら、自称愛の伝道師な海斗先輩にもとりあえず参考意見として聞くことにした。




「いや、学校の後輩に相談されたんですけど。もし、近しい人を好きになった場合どうしたらいいと思います?」


新恋人の影響から禁煙中とういう先輩は、にやりと笑って電子たばこを取り出すと、ふざけた言葉を返しをしてきた。


「何だお前やっと姉貴に告白する勇気ができたのか?」


はい???


即座に自分の話ではないと否定し、ついでにシスコンではないと付け加えた。




「じゃあ、お前の姉貴とのデートをセッティングしてくれよ」


なんでそういう話になるんだと思いながら、先輩みたいなタイプは姉はあまり好みじゃないと思いますよとやんわり拒否することにした。


「あぁ、後輩の話だったな」


さっきからそう言ってるでしょ。という言葉は呑み込んでとりあえず続きを聞くことにした。




「まぁ、告白しないで後悔するくらいなら、して後悔した方がいいんじゃね。

ダメだっても5年後には笑い話になるだけだろうし」


失敗しても笑い話になる…。


それはそうかもなと考えていると、先輩は椅子を傾けギシギシいわせ言葉を続けた。




「あっ、そうそう。できるだけ、ロマンチックなシチュエーションで、告白しろよ。

思い出の場所とか。お前、そういうとこ気にしなさそうだけど。女は、そういうの気にするからな」


余計なお世話ですと反射的に突っ込んでしまう。


横を見ると明らかにニヤニヤしている自称愛の申し子な先輩が電子たばこを咥えていた。


絶対言いふらすつもりだな、この人…。




少し憂鬱になりながら、鞄をロッカーから出す。


用事があるんで失礼しますと更衣室を出て行こうとすると最後に笑いをこらえた先輩が後ろから声をかけてきた。


「じゃあ、後輩とやらによろしくな」


この自称愛の伝道師兼申し子は、明日までにバイトのみんなに伝道しまくるつもりだろうな。


明日のバイトは面倒くさそうだと考えながら、連治は告白してみようかと思いだしていた。





2011年 08月 05日




【感謝】

またお一人お気に入り増えてました。

ありがとうございます。

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