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起動したてのアンドロイド  作者: 葉藻阪 松園
第一章:家族になったアンドロイド
19/30

連治は水族館でデートだと自分に思い込ます


「水族館行ったことないの?」


昼食中に久美と一緒に会話をしていると釣りから水族館の話になり、久美が水族館に行ったことがないと知って思わず大声を出してしまった。


じゃあご飯食べたら行こうかと提案すると、晩御飯の準備があると返答があったので、水族館の帰りに一緒に買い物に行く約束をした。




食べ終わった後食器を片づけ、洗いものはしておくから先に準備しておきなと告げて、強引に久美の食器を洗いだす。

ありがとうございますと後ろで呟く久美の声を聞いて、暑いから帽子をかぶった方がいいよとアドバイスをして、とりあえず貯金箱からお金出せば足りるかなとお金の心配をすることにした。




************




冷房がキンキンに利いた水族館に入ると、セミが引き起こしている雑音がなくなり、かわりに小さな子供の騒ぎ声が館内の壁に反響して響いてきた。


中高生用のチケットを二人分支払ったあと、後ろから来る人の邪魔にならないためか壁際に車いすを寄せている久美を手招きして、お土産売り場は後回しにしてまずは入口から二人で入ることにした。




最初の部屋は、いろんな種類のエイが見ることのできる部屋だった。というより、エイしか見ることのできない部屋だった。


水族館初心者の久美でもさすがにエイくらいは知っており、テレビで見たことあるらしい。


「ここは、エイが自慢な日本でも有数の微妙な水族館なんだよ。

これはアカエイって言って、日本でも釣れるよ」


釣ネタ以外に話すことはないのか俺は?


まあ、それ以外詳しくないものとしては勘弁してほしいけれど…。




無意味な葛藤をしていると、久美が空気を読んで釣ったことあるの?と聞いてくれたので、心の中で感謝して会話を続けた。


「前に一度、釣友のおじさんに連れて行ってもらったときに釣ったよ」


そう言った後に、どれだけ大きいエイを釣ったかだとか、それがどれだけすごいことで、どれだか大変だったかを話そうかとしたが、久美には興味ないことだろうと思いなおし、喉元で止めておいた。




「食べれるの?」


釣り人がよくされる質問NO1がきたので、すらすら答えることにする。


「毒を持っていてすごく危険だから、普通は、そのまま放流するよ。

外国では、食べるところもあるみたいだけど。

日本でも煮物にする地域もあるらしいけど、毒持ってるからね。

素人は手を出さない方がいいってさ」


「そう」


「それにほら、俺あんまし料理に興味ないから、エイ以外の普通に食べれる魚も大抵の場合キャッチ&リリースだったり釣友にあげたりだったりかな。

偶に、姉貴が本格的に料理する時間がある時は、釣った魚持って帰ることもあるけどね。

最近、姉貴忙しそうだったから」


「私料理できるよ。

毒のある魚は無理だけど、何度かさばいたこともあるから」


「本当?

じゃあ、頼もうかな。

この季節は、アジやサバが釣れるからね」


今度からは釣った魚は持って帰ろうかな。


そう考えながら、


全く釣れなかったときは、釣友のおやじギャグで頻繁に登場する誤魔化すために魚屋で買って帰るシーンを体験することができるのかな。


と関係ない方へ思考がいき一人でにやけていると、久美の視線を感じて、慌てて真顔に戻す。





その後、クラゲ、イソギンチャク、ウニ、ヒトデ、ナマコとかなり偏ったチョイスの部屋を通り、やっと女の子受けするであろう熱帯魚の部屋に入ってきた。


部屋に入って最初のうちは真剣に見ていた久美が、突然、うつむきだし魚を見ようとしなくなったのに気付いた。


女の子は好きだろうと思っていたのだが…。


苦手なのだろうか?


不思議に思って、苦手なのかと聞いてみたらどうもそう言う訳だはないらしい。




どうしたのかと再び聞いてみると、暫く悩んだ後、とんでも回答を答えてきた。


「あの。前に、人間は、近くにいるものに似てくると言われたことがあるので、あんまり魚を見てると、そういったものが苦手になってしまうのではと…。

私あまりそうゆうのが得意じゃないから」


はい??


一瞬、意味が分からなかったが、というより未だに意味が分からないが、真剣に語ってくる久美を見て、茶化さない方がいいかなと判断を下す。




「大丈夫だろ。魚に似るなんて聞いたことないし、もし仮にそうだとしても、一番近くにいるのは俺なんだから、俺に似てくるだろ」


そう返すと、久美はしばらく考えるような表情をした後、そうですねと言って顔を上げた。


とりあえず俺の答えに満足してくれたらしい。


その後の水槽は、きちんと見ることにしたようだ。


出会った時は人形みたいだと思っていた久美が最近少しづつ表情を見せてくれるようになったことに喜びを感じて、このまま本当の家族になっていければと心から願った。




ゆっくり巡った後、というより釣談義を一方的に語った後、出口に近づいてきた。




最後のサメの歯のモニュメントが展示されている部屋に入った瞬間、ふと凛音と来た時のことを思い出した。


「小さい頃、凛音がこれを怖がってたんだよね。

凛音も水族館は好きだったんだけど、最後この部屋を通らなければいけなかったから、いつも眼をつぶって通ってたんだ」


「そうなんですか?」


「ああ。俺は特に怖くなかったから、大抵、手を引っ張っていたんだけど、その日のおやつを取り引きで要求してたよ。

まあ、凛音はが食べてる時じっと見てくるから、結局、凛音のおやつは凛音が食べてたけどね。

あれだけ見つめられると食べれないよ。完全に目から何か出てたよ」


「ふふふ」


最近少しづつ笑ってくれるようになってきたな…。


そう思って、サメのモニュメントを越えると、出口にから夏特有のむっとした空気が感じられるようになった。





「どうだった?」


そう久美に尋ねると、しばらく考えた後、久美は、楽しいと感じましたと答えてきた。


なんか変わった言い方だな。


まあ、姉ほどではないか。


よく考えたら、デート終わった直後にどうだったなんて普通は聞かないよな…。


まあ、久美はデートと思っていないだろうけど…。


そんなことを考えながら、車いすを押すことにした。



2011年 08月 02日―投稿

2011年 08月 04日―改定―迷惑かけます

2011年 08月 07日―改定―迷惑かけます×2


【コメント】

デート難しい。

何かハプニング起こした方が良かったかな?

思い付かなかった。

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