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起動したてのアンドロイド  作者: 葉藻阪 松園
第一章:家族になったアンドロイド
17/30

連治は自意識過剰な勘違いをしそうになる

久美のことが頭から離れ時結局一睡も出来ずに朝になり、さすがに疲れたのか睡魔が襲ってきた。

二度目から覚めると、結局2時間しか眠れなかったことが分かった。


キッチンへ行くと久美が夏休みの宿題をしているらしく、机に向かっていたのだが、こちらに気づき、朝ご飯はどうするかと聞いてきた。




どうもさっき眠っていたときに朝ご飯の時間なので起こしに来たらしい。

起きなかったため姉と先に食べたと伝えられた。


久美によると、うそ寝かどうかをを試すわといって姉がほっぺとおでこにキスをしまくっていたらしいのだが、そんな情報はいらないよと久美に苦笑する。

朝ご飯の準備をしようとする久美を手で制して、自分で冷蔵庫に入った久美お手製の朝ご飯を取り出して久美の隣の席に座った。




釣り雑誌を広げ、コーヒー飲もうとすると、隣の久美に尋ねられた。


「昨日眠れなかったんですか」


久美のことを考えていて眠れなかったなんて言えないな…。


そう思いながら、暑かったからなと適当に答えて、サンドイッチを口に運んでいった。




食事が終わり食器を片づけた後、先日買った釣り雑誌を読んでいると、英語のドリルをしている久美がチラチラこちらを伺っていることに気付く。


どうしたのだろうか?


気になったので質問すると、なんでもないですという返事が返ってきた。


何だろう?

もしかして俺のことが気にな…。いや!

これまでの人生経験上過度な期待は持たない方がいいな。


そう自分に言い聞かせ、今月買えなかったリールの広告のページをため息をつきながらめくことにする。




すると、久美が何かを呟きながら、前髪と額に何かが触れたことが分かった。


え?


少し驚いて視線を上げると久美が手を伸ばしているのが目に入る。


「髪に糸くずがついてたから」


驚いていると、久美から質問より前に答えが返ってくる。




糸くず…。

なるほど…。


それでさっきからこっちを見ていたのか。


やっぱり変な勘違いしないでよかった。と前向きに考えることにする。



糸くずそんなに気になったのか。

一度気にしだすと止められないのかな?

すこし意外だな。


今まで知らなかった久美の一面を見れたことに満足して、ありがとうとお礼を言っておいた。




お礼を言うと、久美が恥ずかしそうにうつむく。

いや、恥ずかしそうの部分は、脳内変換された情報かもしれないが…。


とにかく暫くこの久美の様子を見てみたいな。


そう神様に願ったところ、日ごろの行いが悪いせいかお客を知らせるチャイムが玄関から聞こえてきた。


しかも何度も何度も。




出てみると布団の販売の説明だったため断ろうとしたのだが、眠気で頭が回らずうまく丸めこまれて15分も話を聞かされてしまった。


「お姉さんによろしくね」


そう言って、にこやかな笑みを浮かべて去っていくおばさんに、善処しますと伝えて、やっとキッチンに戻ってこれた。




キッチンには、すでに久美がいなくなっていた。

御祖湧く部屋に戻ったのだろう。


少し残念に感じ釣り雑誌を手に取る。

リビングのソファーに寝転がって読んでいると、眠気が襲ってきていつの間にか雑誌を顔に乗せて仰向けで寝てしまっていた。




さわっさわっ。


おでこを誰かが撫でているのに気付き、また馬鹿姉かと思ってゆっくり眼を開けていく。


「風邪ひきますよ」


そういう久美の声が聞こえ、久美の顔が間近にあるのが目に入ってきた。



なぜおでこを撫でて起こすのか全く分からず混乱していると、久美の方も自分の行動の不自然さに気付いたのか、慌てて何か言おうと口が少し動いていたが何の言葉も出てこなかった。

眼と眼が合い、暫くお互い動くことができず、時計の音と心臓の音だけが聞こえてきた。




急に我に返ったのか、ごめんなさいと言って前かがみになった姿勢を勢いよく戻そうとしバランスを崩してしまい、車いすから彼女が倒れてきた。


倒れてきた彼女を受け止めて数秒たったのちにやっと少し冷静になり、体を起してそっと彼女を抱え上げ、車いすに座らせた。




「ここで寝ていたら風邪をひくのではと…」


そう言った後、うつむいて自分の部屋に帰って行く彼女に、ありがとうと答えたが、なぜおでこを撫でて起こすのかの答えが結局分からず、続けて何と声をかければいいのか迷っているうちにそのまま見送ってしまった。




深呼吸して現状を整理したが、理解不能であることが分かっただけだった。

そう言えば、ちょい悪親父を目指しているはずの倫理担当の大倉先生が、終業式の日にテレビに映ったと子供のようにはしゃいでたな。

と、どうでもいいことしか頭に思い浮かばなかったことから動揺していることだけは分かった。


もしかして彼女も自分に好意を持っているのかもしれないと一瞬考えたが、そうだとしてもなぜおでこを撫でて起こすのかの理由になっていないと結論づける。



何かおまじないみたいなものなのかなと最終的に思い至り、そういえば乙女趣味なところがあったよなと、とりあえずはそれで納得することにした。








2011年 07月 31日―投稿

2011年 08月 04日―改定―迷惑かけます

2011年 08月 07日―改定―迷惑かけます



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