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起動したてのアンドロイド  作者: 葉藻阪 松園
第一章:家族になったアンドロイド
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久美は悪趣味な男がいることを知る

ターゲットが去った後、先ほどの瞳孔の開いた彼の様子を電脳中枢で何度も再生する。

魅了電波により彼が好意を抱いてくれた可能性があるのではと考え、確認のために再度シードに報告を入れることにした。




「こちら、ムーンです」


どうだった?と聞いてきたシードに、ターゲットの瞳孔が開きいて頬が赤色に変化したことを確認したことを伝えた。


「そうか。人間は、単純だからな。

ムーンに対して、かなり好意を抱いているのだろう」


シードの発言にターゲットが好意を抱いていることを確信すると、喜びを感じているためか機体内の血流の速度と体温が上昇したのを検知した。




慌てて正常状態へ戻そうと深呼吸を繰り返していると、シードがさらに話を続けた。


「定期的に続けろ。あと、ターゲットの額へ皮膚接触をすれば、魅了電波を直接脳へたたき込めるぞ」


皮膚接触について具体的に何をすればいいかわからなかったため聞き直すと、詳細な方法を久美に告げた。


「手や額で、ターゲットの額に直接触れるだけでいい。まあ、唇でもかまわんがな。

ただし、不自然にならないようにしろよ」




シードの説明を聞き、ターゲットが起きているときに額に自然に触れるのは難しそうだと考え、電脳中枢で方法を検索したが名案は湧かなかった。


ターゲットの姉が頬ずりをしているのを思い出したが、通常の人間の行動ではないと電脳中枢に記載されていたため、行動予定案から外していると、シードが話を続けた。




「ああ、そういえば、お前の家族の製造が完了したらしい。

幸せな記録については、何か希望があれば、伝えておけ。

成功の暁には、今までの記録を上書きしてやろう」


今までの記録という言葉になぜか衝撃を受け、思わずその言葉を呟いて、すべて消去してしまうのですかと尋ねると、不満なのかとシードが聞き返してきた。




「できれば、これまでの記録も残しておきたいと…」


久美の発言の後にしばらく沈黙が続き、ゆっくりとシードは口を開いた。


「だめだ。今回のプロジェクトは、重要機密だからな。

ムーンが人件に捕獲され、記録が調べ上げられると都合が悪い。それに今までの記録を持ったままだと、つけたした記録とつじつまが合わなくなるぞ」


記録を残してもらうための口実を考えたが、シードを説得できるとは思えなかったので、久美は了承することにした。




「そうですね。

わがまま言って申し訳ありませんでした」


「かまわん。

だが、我々を裏切らないことだ。

もし、幸せになりたいと考えるのならばな」


シードは声を低くしてそう告げ、ターゲットの好感度と信頼度を上げるように指示して、通信を遮断した。


無言の通信機を眺め、幸せな記録をもらうためには仕方がないと、久美は何度も繰り返し呟いた。







2011年 07月 31日―投稿

2011年 08月 04日―改定―迷惑かけます

2011年 08月 07日―改定―迷惑かけます

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