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起動したてのアンドロイド  作者: 葉藻阪 松園
第一章:家族になったアンドロイド
13/30

連治はナンパ師を撃退する

連投です。

おととい一日一話と宣言しておきながら、いきなり破ります。

すいません。

ある日曜日、鼻歌を歌っている姉が作っている昼食ができるのを待っていた。

椅子に座って釣り雑誌を読んでいると、隣に座っている久美がいつもより少しだけ大きめの声で姉に提案しているのが耳に入った。


「あのっ。

これから、私が料理をしましょうか」


「大丈夫?」


「はい、得意です」


「じゃあ、お願いしようかな。

最近、仕事が忙しいのよね」


ふふふ妹の手料理弁当かーと訳のわからないことを言って、トリップしている姉に苦笑して横目で見ていると、突然再起動してこちらを向いてきた。


「連ちゃんは、久美ちゃんの買い物手伝ってあげてくれない?」


「ああ、分かった」


確かに車で買い物をする姉はともかく、車いすで3人分の食材を買いに行くのは大変だろうからすぐに了承した。




「あっ、久美ちゃん、連ちゃんに料理は手伝わせさせないでね。

連ちゃん興味のないことは、すごい適当だから」


いらんこと言わなくても…。

了承しがたいが的を得ているかな…。


「はい!」


えっ??


勢いよく答えた久美に驚いて振り向く。



あっと言ってうつむいた久美に苦笑いしながら、昼飯の後夕食の買い出しに行こうかと声をかけることにした。




*******************************




「今日の晩飯何にするの?」


「二人ともかぼちゃが好きと聞いたので、かぼちゃの煮つけと焼き魚にしようかと。

日本酒にも合うって聞いたので」


確かに酒好きの姉は喜びそうだな。



魚のパックを見比べる久美を見てふと昔を思い出す。


そういえば、こんな風に凛音とよく一緒に買い物に来てたな。


タイムセールに間に合うように、いろんなスーパーに引っ張りまわされてたことも合わせて同時に思い出し、よく考えれば、いやよく考えなくても凛音は変な小学生だったなと苦笑する。





「どうしました?」


どうもニヤニヤしているところを見られていたらしい。


「なんでもない」


言い訳した方がまだ変に思われないかな…。


「凛音と買い物をしていた時のことを思い出してただけだよ」


「そうですか」


「ああ」


伝えた後で、今日久美と一緒にアイスを特集していたテレビ番組を見ていたときに、思い出し笑いを頻繁にする男はむっつりだと女優が発言していたのを思い出した。


失敗したと感じたが久美は特に気にしてないようで、まだどの魚にしようか悩んでいた。


とりあえずその女優がカップアイスを買った時にスプーンを入れ忘れられるように願っておく。




「これで全部か?」


「大根おろしを付けたいので、大根が欲しいです」


大根おろしか…。冷やしうどんが食べたくなったな…。


「取ってくるから先にレジに行っといて」


久美にそう伝えて、野菜売り場に向かうことにした。





大根を手に入れた後レジに向かっていると、久美が見知らぬ男と話しているのに気づく。


誰だろう?

久美の表情が暗い…。俯いてるし…。

変態のナンパ師で決定だな…。




そう判断して、男に話しかけた。


「初めまして。妹に何か御用ですか?」


この変態は、意外なことに全くへこたれずに、いやそれどころか満面の笑みで自己紹介してきた。


「やあ、君が連治君かい?

僕は、三条四郎。君のお姉さんの後輩だよ。聞いてないかい?」


後輩?


意外なことに姉の知り合いであることが判明した。

ただ、自信たっぷりに聞いてないかいと聞いてきたことから、変態のナンパ師からナルシストに改名する必要に迫られた。




なぜ久美のことを知っているのか解決できていなかったが、警察に突き出す前にとりあえず会話を続けることにした。


「いえ。全く」


さすがのナルシストもショックを受けたのか少し顔をひきつらせ返事をしてきた。


「そっ、そうかい。

じゃあよろしくね。

前に仕事中に轟先輩と歩いていたとき、偶然久美ちゃんに会ってね。轟先輩が養女にしたいって言うから、一緒に久美ちゃんの孤児院に行ったんだよ。

その後、どうなったのか気になっていたんだけど、今、偶々彼女を見かけてね。

話を聞いてみたんだ」


ああ、それで知っていたのか…。


久美のことを知っている理由が分かり、眼に見えて落ち込んでいるのがちょっとかわいそうになる。

慰めようと、姉は仕事の話を家で全くしないと告げると、少し自信を取り戻したようで声量が大きくなった。




最初は不審者かと思ったと正直に話したら、勘違いされないように気を付けるよと苦笑いし、買い物の邪魔をして悪かったねと言って去って行った。



意外とよい人で馬鹿姉に振り回されるタイプかなと最終的に判断し、久美と家に帰ることにした。




*****************************




エプロンをした久美が車いすを器用に動かし黙々と料理をするのを眺めていると、凛音とは顔は似ているけど全然違うことを改めて実感していた。




凛音は料理をするときは鼻歌を歌っていたし、味見を頻繁に要求してきたな。


姉に似てたな、そういう所は…。


久美は凛音とは全然違うな…。


ただ、見ていると落ち着くところが一緒みたいだけど…。




こちらを向いた久美とふと視線が重なる。


「どうかしました?」


「凛音と顔は似ているけど、やっぱり全然違うんだなと思っていた」


と正直に答える。



そして、今日が釣り雑誌の発売日だったことを思い出し、あわててコンビニまで買いに行くために立ち上がった。








2011年 07月 29日―投稿

2011年 08月 04日―改定―迷惑かけます

2011年 08月 07日―改定―迷惑かけます×2

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