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起動したてのアンドロイド  作者: 葉藻阪 松園
第一章:家族になったアンドロイド
10/30

久美は新たな感情を得る

ターゲットに頭を撫でられ中。

どう反応すれば彼に気に入られるかが分からない。

電脳中枢で現在の状況への対処方法を久美は必死で検索していた。




まず検出されたのは、テレビドラマのワンシーン。

3カ月ほど前に院長と一緒に見ていた月9のドラマで、頭に乗った男性の手を子供が払いのけているものだった。

ただ、その行動に移すのをやめにした。

そのドラマのその後二人の関係は、良いとは言い難かったから。

他に方法がないか再び電脳中枢での検索を再び開始したが中々見つからなかった。




咳ばらいが扉の方から聞こえたのでそちらに視線を移すと、ターゲットの姉が両手で頬を抑えて満面の笑みを浮かべているのが観察された。


慌ててターゲットが久美の頭から手を離したのを感じて、久美の心拍数にわずかだが変化があったことに気づく。


ハート・プログラムの影響が早くも出てきたことに少し驚き、ターゲットに視線を戻した。




「ずっと見てたの?」


というターゲットの質問にターゲットの姉は答えず、


「まあ、何かあったらいつでも相談に来てね。

私たちは、もう家族なんだからね」


と発言した後、久美達に近づき、二人同時に抱擁してきた。



家族という単語を検出した瞬間に心音の増大。一瞬だった。一瞬だったが感知した。そんな気がした。

すぐに消滅したので原因を保留にすることに。




それより何より、今はこの状態を何とかしないといけなかった。

ターゲットの姉が二人同時に無理やりの抱擁。

そのせいでターゲットがこちら側に倒れ込んでしまっている。

彼は車いすに手を置いて、私に体重がかからないように必死にこらえているようだった。


「じゃあおやすみなさい」


満足したのかターゲットの姉はそう言って離れていったので、ターゲットも姿勢を立て直し、ため息をついてから、お休みと久美に声をかけて姉に続いて部屋の出口へ向かっていった。


「それから、私のことはお姉さんと呼んでいいわよ」


部屋を出る直前に扉の前で、振り返っての彼女の発言。

彼女の笑顔は私が頷くまで微動だにしなかった。

少し不思議に思ったが、その後はにやけ顔だった。

少し疑問に思ったが、好いてはくれているのだろう。

そう結論づけた。




"何を張り合っているんだか。"


ターゲットが彼の姉を追い越しながら、彼女に向かって呟いた。

いやそう呟いているように聞こえただけなのだけれど、理解が不能だったため発言の真意を後でシードに確認すべきだろうかと考えた。





二人が出て行き蝉の鳴き声が急にはっきり聞こえ出す。

家族という言葉を聞いたときのことを思い出す。

心臓から放出される血液の急激な流速の上昇。それを感知したことを思す。

何度か家族という言葉を呟いてみることにした。


家族と呟くだけでは何も変化が起こらなかったが、ターゲットとその姉のことを思い浮かべて呟くと、心臓の拍動が速まる現象が確認された。




ハート・プログラムで得られた感情だろう。

先ほどインストールしたばかりなんだけれど。

なんという感情だろうか。としばらく考えてみた。


初期から備わっている喜びという感情だろうか。

それとも、幸せという感情が得られたのだろうか。

いくつか候補を上げたが正解は導き出せなかった。いや、どうすれば答えが分かるのかもわからなかった。




電脳中枢で感情について考えていると、ふと、彼らとはいずれ別れなければならないことを思い出す。

そして、彼らに好意を抱くことの危険性に思い至った。




彼らと一定の距離をとっていなければいけない。

その上、信頼されなければならない。

二つを同時にという無理難題をどうやれば解決できるのか。


アンドロイドの未来。本当の家族と幸福な記録の獲得。

そのためにも何とかしなければと久美は決意した。









2011年 07月 27日―投稿

2011年 08月 04日―改定―迷惑かけます


【お知らせ】

おそらくですが、これから1日1話ぐらいになるかと思います。

地の文が無駄に長い・プロローグが無駄に長い(主人公出会うまで5話とかあり得ない)と言われた。

確かに…。

少しずつでも改善していきます。

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