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私の可哀想な異母妹

作者: Ash
掲載日:2026/06/11

 母が死んで、喪服の注文中に、父が再婚した。慶事だから、喪服は不吉だと言われたが、注文はキャンセルしなかった。

 父の昔からの恋人である継母とその愛娘の異母妹。

 この展開に、私は「ああ、web小説みたい」と思った。

 よくある真実の愛の物語。

 自分は身分を捨てる勇気もなく、真実の愛の相手を日陰の者にしても、我が子が貴族として結婚できる緩いなーろっぱの制度に甘えたクズ男の話が。

 しかし、異母妹の髪を見た瞬間、私は思い至った。彼女を守らないと、と。




 ◆◇◇◇




「いい? リンジー。あなたは知的な黒髪でも、美人の金髪でもなく、情熱的な赤毛でもない。身の程を弁えておかないといけないのよ」

「酷いわ、お姉様! いくら、私がお父様に愛されているからって、酷いことを言うなんて!」

「お父様に愛されているかどうかなんて、関係ないの。これは殿方に好かれる髪色かどうかの問題なの」

「お姉様、私の髪の色が好かれないって言うの?!」

「人気はないわ。人気者はその年の流行の色の髪の色じゃないといけないけど、それは大概、金髪で、茶髪の流行る年はほぼないの」

「酷いわ、酷いわ! 私が嫌いだからって――」

「リンジーに酷いことを言わないで!」


 継母まで参戦してきた。


「いいえ、お義母様! リンジーが人気者になるには流行を作り出す側にならないと駄目なのです!」

「「え?」」

「髪の色は手入れの仕方で多少は明るくできるので、金茶色に見えるように頑張りましょう。それが無理だった時の為に流行を作り出す人気者にしなければ!」

「お、お姉様?」

「人気者の道は簡単じゃないわよ! でも、あなたが雀と馬鹿にされたいなら、私の言ったことはしなくていいわ」

「!!」


 ショックを受ける異母妹。


「馬鹿にされるって、そんな・・・」


 直撃を食らっていない継母は反論しようとする。


「お義母様。あなたの存在が父の癒しだったことは受け入れます。でも、リンジーにまで癒し担当にして、日陰の身にしてもいいのですか?!」

「!!」


 継母はショックを受けた。


 茶髪は確かに癒される。金髪や赤毛の多い貴族の中で、平民に多い茶髪は癒しの色だ。

 だから、父は継母に癒しを求めたのだろう。

 その継母と同じ色の髪を持つ異母妹もまた、個性を出さなかったら埋没して、庶子を理由に日陰の身に落とされやすい。


「脱日陰の身! 脱都合の良い女! 身分の高い者にも茶髪はいるもの。リンジーをそんじょそこらの茶髪と一緒に埋没させるわけにはいかないわ!」

「ラナ、そこまでリンジーのことを考えてくれるの?」

「当たり前ですわ! リンジーが茶髪だからと蔑まれるのは我慢できませんわ!」


 フンスとばかりに言ったら、継母がしみじみと言った。


「・・・貴族の子どもって、11歳でこんなことを考えるのね」


 ギクッ。




 ◇◆◇◇




「髪をビールで洗うの?」

「ビールで洗うと、髪色が明るくなるのよ。脱地味な茶髪!」




 ◇◇◆◇





「お姉様、まだ勉強しなければいけないの?!」

「ラナ、頭でっかちの女は嫌われるわよ」


 継母が援護射撃をする。


「いいえ、リンジー! これはあなたの為なの。完璧なマナーはあなたを守る鎧になるわ。それに高度な教養があれば、生活水準が落ちるかどうかわかるわ。折角、貴族になったんだから、死ぬまで上流階級を楽しみたいでしょ?」

「それは、まあ、そうだけど」

「教養のない男はね、出世も領地経営もできずに家を傾けてしまうの」

「でも、教養があると、小賢しいと思われるんじゃ・・・」


 異母妹と継母は視線を交わす。


「別に知識をひけらかさなくてもいいのよ。そーなんだー、って頷いていれば、良いんだから。寧ろ、知識を隠して噂話や話の裏を読んで伝えれば夫に感謝されるわよ」

「そういうものなの?」


 異母妹だけでなく、継母も初耳とばかりに見てくる。


「そういうものよ、貴族の女性の社交は。夫が喜ばないなら、父に言えば喜ぶわよ」

「お父様に?」

「夫は離婚して仕舞えば他人だけど、結婚しても、父は父でしょ。離婚しても受け入れてくれるし」

「ああ、確かに」


 納得してくれて何より。


「貴族の子どもって、11歳でこんなことまで考えているのね」


 しみじみと継母に言われ、私は開き直ってアルカイックスマイルを浮かべた。





 ◇◇◇◆




「お姉様! 私は結婚なんかできそうにないわ!」


 何度も途中で止めようとしては、宥めすかしてマナーと教養を身に付けたリンジーが、デビュタントが成功して人気者になったにもかかわらず、その日の夜会から帰宅したと同時に泣きついてきた。


「どうしたの、リンジー?」

「どいつもこいつも、性格の悪い家庭教師みたいな男ばかりなのよ! 偉そうに教えてきて! そんなこと知ってるっつーの!」

「それは、話した相手が悪かったのよ」

「何人もいて、みんなそうなのよ」

「それがわかるようになったってことは、あなたが成長したからなのよ、リンジー。教養がなかったら、殿方の化けの皮も気付かないままだったんだからね」

「ああ、だから教養を身に付けろって言ったのね」


 異母妹の後からやって来た継母は納得したようだ。


「わかってもらって嬉しいわ。――そんな二人に、私からも報告があります」

「報告?」

「私、自由の身になりました」

「「ええ?!?!」」


 少し早く驚いたショックから立ち直った継母が言う。


「あなた、この家の跡継ぎだから、結婚相手がいるでしょ?」

「他の女を孕ませたお家乗っ取り野郎はいりません」

「「ええ?!?!」」


 今度は継母も驚いたショックから復活しない。


 よくある家を継ぐ為に頑張る姉と、庶出で甘やかされた妹の毒牙にかかる婿候補。

 その公式を、異母妹を立派な淑女に育て上げることで回避。

 ついでに、浮気するような男も回避。

 異母妹を育てるついでに、浮気男の自滅を狙う策が成功!


「ということで、前の婚約者より上の爵位狙って、公爵家の庶子を婿にしようと思います」

「すごっ」

「決め台詞は『当家でも庶出の妹がいますが、仲良くやっているので、有能な庶子をお願いします』かな」

「//////」


 照れる異母妹。


「だから、あなたは気に入る相手が見付かるまで、じっくり探していていいわよ」


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― 新着の感想 ―
お話は面白かった。 ただ、句読点がやや多いと感じた。
パワーのあるお姉様www これから強く生きる女三人の物語だな……いい話だった
お姉様が強いししっかりしてるし、なんだかんだで面倒見がよい素敵なお話でした!
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