第62話 基準が書き換わる
変化は、宣言から始まらなかった。
法改正でもない。
条約でもない。
ただ、
早い方が選ばれただけだった。
物流の現場
ある港町。
通界式で育った監督官が、
荷の山を一瞥して言った。
「書類は後」
「先に動かす」
部下が戸惑う。
「責任は?」
「現場で持つ」
「問題が出たら、止める」
数日後。
滞留していた荷は消え、
市場は回り始めていた。
上層部は、
結果だけを見て判断する。
「……問題は?」
「ありません」
それで、終わった。
人材評価の変化
別の国。
新任の役人が、会議で発言する。
「肩書きより」
「現場で何を止めて」
「何を通したかを見るべきです」
年配の官僚が、眉をひそめる。
「前例がない」
「通界では」
「前例が、遅れの原因でした」
数ヶ月後。
その部署だけ、
異様に仕事が早くなっていた。
評価基準が、
静かに変わる。
法と判断
法律は、書き換えられなかった。
だが。
運用が、変わった。
条文よりも、
現場判断が優先される。
違反は、
即座に是正される。
罰は、
後回しになる。
結果。
問題は、
大きくなる前に消えた。
共通する理由
なぜ、各国で同じ変化が起きたのか。
理由は、単純だった。
「通界に合わせた方が、早い」
それ以上でも、以下でもない。
誰も、
通界に命令されたわけではない。
ただ、
遅れる方が損になった。
王都の静かな認識
王都でも、同じだった。
リディアが、報告書を閉じる。
「最近」
「通界式でない案件ほど」
「処理が遅れます」
王は、苦笑した。
「世界が、先に動いているな」
「はい」
追いかけているのは、
こちらだった。
小さなドーン
この頃には。
世界の多くが、
気づき始めていた。
通界は、
基準を押し付けていない。
だが。
最も合理的な基準として、
選ばれている。
それが、
最も静かな支配だった。
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