第61話 扱い方が分からない
世界は、通界をどう呼べばいいのか分からなくなっていた。
国ではない。
同盟でもない。
属国でも、敵国でもない。
だが――
無視できない。
各国会議の断片
ある国では。
「通界代表を呼べ」
「誰を?」
「……誰だ?」
別の国では。
「条約を結ぶべきだ」
「どの形式で?」
「国家じゃない相手と?」
また別の国では。
「敵対関係にない以上」
「友好国扱いでは?」
「だが、国ですらない」
議論は、必ず同じ所で止まった。
分類できない。
外交官の混乱
外交文書の下書き。
宛名の欄が、空白のままだ。
「通界国王陛下へ」
書けない。
「通界代表殿」
違う。
「通界管理局」
存在しない。
最終的に、
こう書かれる。
「通界関係者各位」
それが、限界だった。
便利すぎる存在
通界を外す案は、
どの国でも一度は出た。
だが。
・流通が遅れる
・人材が育たない
・判断が鈍る
結果は、即座に出た。
「外した方が、不利だ」
それだけだった。
現実的な結論
ある小国の首相が、会議で言った。
「もう」
「通界をどう扱うか、ではない」
全員が、顔を上げる。
「通界が存在する前提で」
「我々が、どう変わるかだ」
反論は、出なかった。
共通した答え
数週間後。
各国で、
似たような結論が出揃う。
「通界は」
「通界として扱うしかない」
それは、
降伏でも、同盟でもない。
諦めに近い理解だった。
国境の薄れ
通界を経由する人と物は、
日に日に増えていく。
どの国の貨物かよりも。
どこへ向かうかが、重要になる。
国境は、
地図の線として残るだけになった。
小さなドーン
この日。
世界は、
通界を定義することを諦めた。
だが同時に。
通界を基準に、世界を考え始めた。
名前を与えられなかった存在が、
世界の中心になった瞬間だった。
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