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魔力ゼロって言われたけど、無限に溜まってたのでダンジョンから国を作ります  作者: 蒼野湊


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第54話 守る理由は、命令じゃない

 通界に「軍」はなかった。


 正確に言えば――

 作らなかった。


 徴兵制度は存在しない。

 制服も、徽章も、階級もない。

 号令も、行進も、旗も掲げない。


 だが、それでも――

 この場所は、揺れ始めていた。


港の違和感


「……最近さ」


 港の見張り台で、

 古参の冒険者が、海を眺めたまま呟いた。


「妙に、空気が重くないか」


 夜風は穏やかだった。

 波も静かだ。

 だが、“何かが近づいている”感覚だけが、消えなかった。


噂は、風より先に来る


 酒場では、声が落ちる。


「王都が動いたらしい」

「周辺国家が、様子を見てるって話だ」

「……通界、狙われてるんじゃないか?」


 誰かが言い切るように呟き、

 すぐに、沈黙が落ちた。


 だが、その沈黙を破ったのは――

 否定でも、恐怖でもなかった。


「だからって」


 低い声。


「逃げるか?」


 誰も、答えなかった。


 逃げる理由は、

 もう、ここにはなかった。


冒険者たちの現実


「俺さ」


 中年の冒険者が、酒杯を置く。

 音は、やけに大きく響いた。


「ここに来てから、初めて“次の仕事”を考えなくなった」


「……分かる」


 別の男が、静かに頷く。


「稼げる」

「腹も減らない」

「眠れる」


 そして――

 誰かが、最後に付け足す。


「死ににくい」


 それは希望であり、

 同時に、失う恐怖だった。


誰も言わない言葉


 誰も言わない。


「守れ」とも。

「戦え」とも。


 だが、

 失いたくない場所になっていた。


 それだけで、十分だった。


きっかけは、些細なこと


 夜。


 港の倉庫で、

 一人の不審者が捕らえられた。


「……他国の斥候だな」


 迷いはなかった。


「どうする?」

「追い返すか?」

「……殺す?」


 一瞬、空気が張りつめる。


「やめとけ」


 別の冒険者が、短く言った。


「ここは、そういう場所じゃない」


 縄を解き、

 水と食料だけを渡す。


「帰れ」

「二度と来るな」


 それだけ。


 剣も、脅しも、なかった。


翌朝の変化


 次の日。


 港には、

 武装した冒険者が増えていた。


 誰に命じられたわけでもない。

 報酬も、契約もない。


 だが――

 配置は自然に決まっていた。


 交代制の見張り


 魔法感知の簡易結界


 侵入時の連絡符


「……誰が決めた?」


「俺じゃない」

「俺も違う」


 だが、全員が理解していた。


 必要だったから、そうなった。


リクスは、関与しない


 この動きは、

 当然のようにリクスの耳に入った。


「止める?」


 フレイが聞く。


「いや」


 リクスは、首を振る。


「命令じゃないから」


「……放置?」


「尊重」


 アクアが、帳簿から顔を上げる。


「人件費は?」


「発生してない」


「契約も?」


「してない」


 一拍。


「……一番、厄介な形ですね」


「うん」


 リクスは、苦笑した。


自衛組織の正体


 それは、軍ではない。


 指揮官はいない。

 規則も、最低限。

 罰則も、忠誠もない。


 ただ一つ、

 全員が共有していることがある。


「通界を――

 戦場にしない」


 それだけ。


外から見た恐怖


 斥候の報告は、簡潔だった。


「軍は存在しない」

「だが、侵入は不可能」

「全員が独自判断を持っている」

「命令系統が、見えない」


 国家が、

 最も嫌うタイプだった。


フレイの評価


「……一番、強い形だね」


「何が?」


「誰の命令でも動かない集団」


「だから?」


「崩せない」


 フレイは、静かに言った。


小さなドーン(確定)


 この日。


 通界は、

 軍を持たずに、防衛を得た。


 徴兵なし。

 命令なし。

 強制なし。


 だが――


 誰よりも、

 自分の居場所を守る集団。


 それが、

 通界の答えだった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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