第52話 久しぶりに、潜ろうか
書類が、減っていた。
正確には――
減らせるようになっていた。
「この判断、私がやります」
「資源配分、次の基準で回します」
「現地の裁量で問題ありません」
通界の執務室で、次々と声が上がる。
リクスは、それを聞きながら椅子に背を預けた。
「……あれ?」
気づけば。
「俺、
今日やることなくないか?」
権限移譲の成果
フレイが、書類をまとめながら笑った。
「やっと“上”が仕事しなくて済むようになったね」
「それ、褒めてる?」
「褒めてる」
アクアは帳簿を閉じる。
「数字も安定してます」
「市場も問題なし」
「人材も回ってる」
一拍。
「……逆に、
リクスが暇になるのが計算外でした」
「ひどい」
でも、否定できない。
久しぶりの提案
リクスは、立ち上がった。
「じゃあさ」
二人を見る。
「久しぶりに、潜らない?」
「……どこに?」
フレイが聞く。
リクスは、当然のように答えた。
「超大型ダンジョン」
アクアが、即座に眉をひそめる。
「それ、
今や国家財政の根幹です」
「一層目はね」
リクスは、肩をすくめる。
「でも、
二層目はまだ未確認だろ?」
沈黙。
そして。
「……行くなら」
フレイが、剣に手を置いた。
「護衛じゃなく、
冒険としてね」
アクアは、ため息。
「……数字は後で付けます」
それは、参加表明だった。
メンバー決定
結局、集まったのは――
・リクス(言い出し)
・フレイ(前衛)
・アクア(後方・管理)
・研修生から数名(実地経験枠)
「久々だな、この感じ」
装備を整えながら、リクスが言う。
「責任が軽い」
「死ぬと困る人が増えただけで、
軽くはなってない」
フレイのツッコミが飛ぶ。
二層目への入口
視界が開ける。
そこには、見渡す限りの畑と果樹。
すでに実っている。
すでに収穫期だ。
「……おいしそう」
フレイが、一歩を踏み出す。
柔らかい。
湿り気があり、踏み跡が残る。
「いや、土壌が……整いすぎてる」
リクスが鑑定を走らせ、息を呑んだ。
「耕作痕なし。
施肥なし。
それでこの栄養値……
自然に実ってる?」
「……は?」
研修生が声を失う。
鑑定結果:食料国家
リクスの鑑定表示が、淡々と告げる。
・連作障害:なし
・病害虫:ほぼ発生せず
・収穫周期:短縮
・保存性:高
「……国家換算で」
一拍。
「余剰が出ます」
リクスは、畑を見渡した。
「つまり?」
「飢えません」
即答だった。
マジックボックス、初の本領
「じゃあ」
リクスは、軽く言う。
「備蓄しよう」
「……全部?」
「うん」
マジックボックスが開く。
収穫物は、劣化せず、時間も止まる。
穀物。
果物。
保存食向けの作物。
「……国家備蓄だ」
アクアが、低く呟く。
「これで、
通界は“腹を押さえられない”」
冒険者の顔
それでも。
リクスは、楽しそうだった。
「なんかさ」
あたり一面の果樹を見回す。
「久しぶりだな」
「何が?」
「当たりを引いた感じ」
フレイが、苦笑する。
「普通、
国家が引く当たりだよ、それ」
小さなドーン
この日。
超大型ダンジョン二層目は、攻略された。
戦闘は、ほぼない。
だが。
世界にとっては、
致命的な差が生まれた。
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