第50話 鑑定が示すもの
地図は、ただの紙だった。
都市の名前。
街道。
川と港。
――少し前までは。
「……なんだ、これ」
リクスは、思わず声に出した。
通界の執務室。
壁に広げられた地図を前に、彼は鑑定をかけていた。
鑑定結果:生活圏
視界が、静かに切り替わる。
線が、浮かび上がる。
だが、それだけじゃない。
都市を中心に、淡い色が滲むように広がっていく。
「人口流動……物流密度……治安安定度……」
文字が、重なり合って表示される。
線ではない。
「……面?」
都市と都市の間が、
生活の濃淡で塗りつぶされていた。
フレイの一言
「それ、見えてるのリクスだけ?」
横から、フレイが覗き込む。
「多分」
「そっか」
彼女は、少し考えてから言った。
「……ねえ」
「なに?」
「これ、もう国じゃない?」
リクスは、首を振った。
「まだ違う」
「理由は?」
「王がいない」
「法律もない」
「税も曖昧」
指折り数える。
フレイは、肩をすくめた。
「でもさ」
地図の“色の部分”を指でなぞる。
「ここに住んでる人たちは、
もう同じ場所に帰ってるよ」
リクスは、言葉に詰まった。
成長促進の影
鑑定結果の隅に、見慣れない項目があった。
【成長効率:上昇】
「……あ」
リクスは、思い当たる。
研修生。
職人。
都市運営に関わる人間たち。
彼らの成長が、
明らかに早すぎた。
「俺のスキル……」
「自覚あった?」
「正直、
ここまでとは思ってなかった」
フレイは、苦笑する。
「人が育つのが早い場所ってさ」
一拍。
「国が欲しがるやつだよ」
見えない境界
鑑定表示を、もう一段深く見る。
すると。
「……境界、薄いな」
国境線が、意味を持っていない。
人も物も、
“通界圏”を中心に動いている。
外から見ると、
囲われているのは、むしろ周囲の都市だった。
リクスの独白
「……俺は」
小さく、呟く。
「ただ、
回るようにしただけなんだけどな」
フレイは、即座に返した。
「一番危ないやつ」
「え?」
「本人に自覚がないやつ」
冗談めかして言うが、目は真剣だ。
予感
鑑定を解除しても、
あの“色”の感覚が、頭から離れない。
線だったはずのものが、
確実に面になりつつある。
そして。
「……気づくよな」
誰かが。
国が。
王都が。
この異変に。
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