第49話 地図が、線になる
最初に異変に気づいたのは、地図係だった。
彼は、各都市から集まる交易報告を、
いつも通り地図の上に落としていただけだった。
印を打つ。
線を引く。
量を書き込む。
――それを、何年も続けてきた。
「……あれ?」
手が、止まる。
点のはずだった
・港湾都市。
・鉱山都市。
・交易都市。
それぞれは、独立した点のはずだった。
距離があり、
制度が違い、
利害も一致しない。
だから、線を引く必要はなかった。
だが。
「……繋がってる」
地図係は、呟いた。
線は、勝手に引かれた
誰かが命令したわけではない。
協定が結ばれたわけでもない。
ただ、
・魔石が流れ
・食料が流れ
・人が行き来し
同じ判断基準で回っている。
地図上では、それが線になる。
「……おかしいな」
線は、一本ではなかった。
エルディアから通界へ。
通界からグラドへ。
リーヴァから、また通界へ。
行き止まりが、ない。
第三者の視点
「報告を」
小国家の会議室。
役人が、地図を広げる。
「これは……同盟か?」
「いいえ」
即答だった。
「同盟文書は存在しません」
「では、何だ」
役人は、地図を見つめる。
都市同士が、
まるで一つの都市圏のように機能している。
「……線路も、道路も、
全部こちらが整備したわけではないな」
「はい」
「なのに、流れている」
沈黙。
誰かが、低く言った。
「都市が、勝手に並んでいる」
通界では
一方、通界では。
「……最近、魚が多くない?」
「多い」
「しかも、刺身」
食堂の話題は、それだけだった。
誰も、地図の話などしていない。
だが。
この日、
通界の掲示板に貼られた紙が一枚ある。
物流予定表(暫定)
そこには、
・エルディア
・グラド
・リーヴァ
の名前が、
一つの欄にまとめられていた。
アクアの確認
「……まとめました?」
アクアが、リクスに聞く。
「勝手にまとまった」
リクスは、あっさり認めた。
「でも、
ほどく理由がない」
アクアは、少しだけ目を細めた。
「……数字も、
ほどけません」
学園でも
学園。
ミレイは、資料室で地図を見ていた。
通界圏。
その言葉が、
いつの間にか注釈として書き込まれている。
「……線は、
引くものじゃない」
彼女は、静かに言う。
「現れるものだ」
小さなドーン(構造)
この日、
どこにも宣言はなかった。
だが、各所で同じ認識が生まれた。
・単独都市ではない
・だが国家でもない
・しかし切り離せない
それは、
“圏”としか呼べないものだった。
通界の夜
港の灯りが、川面に映る。
魚は届き、
魔石は回り、
人は集まる。
誰も、王になっていない。
だが。
地図の上では、
もう線が引かれていた。
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