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魔力ゼロって言われたけど、無限に溜まってたのでダンジョンから国を作ります  作者: 蒼野湊


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第43話 残った者と、戻った者

 同じ夜。


 だが、場所は二つあった。


グラド――残った者たち


 鉱山都市グラドの朝は早い。


 ロウは、港に近い事務所で帳簿を広げていた。


「……流れ、安定してる」


 魔石の等級。

 搬出量。

 通界経由の精算額。


 どれも、昨日より少しずつ良い。


「“一気に増えない”のが、逆にいいな」


 独り言を呟き、数字を書き込む。


 ここでは、派手さは邪魔だった。


「ロウさん」


 声をかけてきたのは、エナだった。


 坑夫たちの休憩所から戻ってきたところらしい。


「今日、休憩の取り方変えたら

 作業効率、落ちませんでした」


「そりゃそうだ」


 ロウは顔を上げる。


「人が壊れたら、全部止まる」


 エナは、少し照れたように笑った。


「……学園じゃ、

 “支援は後方”って言われてました」


「ここじゃ、真逆だ」


 ロウは、ペンを置く。


「前に出ない支援が、

 一番“前”にいる」


 エナは、その言葉を胸に刻むように頷いた。


 昼。


 監督官が、二人に言った。


「……正直に言う」


 言葉を選びながら。


「君たちがいなくなったら、

 この街はまた戻る」


 ロウは、即答しなかった。


 代わりに、帳簿を差し出す。


「だから」


 一拍。


「仕組みを残します」


「仕組み?」


「俺たちがいなくても、

 同じ判断が出来る形で」


 監督官は、しばらく黙ってから、頭を下げた。


「……頼む」


 それは、雇用でも命令でもない。


 信頼だった。


学園――戻った者


 一方。


 学園に戻ったミレイは、違和感を覚えていた。


「……静かすぎる」


 以前と同じ廊下。

 同じ教室。


 なのに、空気が違う。


 自分が、浮いている。


「ミレイ」


 教官に呼び止められる。


「研修の報告書を」


「はい」


 提出すると、教官の眉がわずかに動いた。


「……これは」


「通界式の、運用記録です」


「理論ではなく?」


「理論は、後付けになります」


 教官は、ゆっくり息を吐いた。


「……随分と、割り切ったな」


「割り切らないと、

 何も回りませんでした」


 それが、答えだった。


 夜。


 ミレイは、ノートを開く。


 書いてあるのは、魔法式ではない。


判断基準


優先順位


止める条件


「……学園には、これが足りない」


 気づいた瞬間、背筋が伸びた。


 自分の役割が、見えたからだ。


交差しない道


 同じ頃。


 ロウは、港で空を見上げていた。


 遠く、通界の灯りが見える。


「……戻らない、か」


 呟く。


 だが、後悔はなかった。


「ここでやること、あるな」


 学園では。


 ミレイが、白紙の資料を前に座っていた。


「……変えるなら、ここから」


 戻った者は、

 内側から壊す役を選んだ。


通界への報告


 夜半。


 二つの報告が、同時に通界へ届く。


『グラド、安定継続。

 現地判断で回っています』


『学園、変化の兆しあり。

 内部からの改修、可能』


 リクスは、短く返した。


『了解』


 それだけ。


 だが、その一言は――


 両方を認める言葉だった。


分岐は、失敗ではない


 残った者は、街を強くした。

 戻った者は、学園を揺らした。


 どちらも、正しい。


 通界は、

 奪わない。


 ただ、選ばせる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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