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魔力ゼロって言われたけど、無限に溜まってたのでダンジョンから国を作ります  作者: 蒼野湊


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第42話 商人は、数字で寝返る

 都市リーヴァは、騒がしかった。


 港。

 倉庫。

 税関。

 市場。


 人も、物も、金も集まる。

 ――だが、流れていない。


「……ここ、詰まってるな」


 街を一望できる高台で、フレイが言った。


「詰まりすぎです」


 ミレイが即座に補足する。


「関税、港湾使用料、倉庫手数料、検査待ち。

 どれも単体では合理的ですが、

 全部重なって動きを止めています」


「商業都市あるあるだ」


 カイルが肩をすくめる。


 今回の派遣メンバーは――


フレイ(責任者)


カイル(実働)


ミレイ(分析)


連絡役としての研修生数名


 そして。


 アクア。


 彼女は、港の数字を静かに眺めていた。


交渉は、しない


「で?」


 カイルが聞く。


「どこに殴り込む?」


「殴らない」


 フレイが即答する。


「アクア」


「はい」


 アクアは、淡々と言った。


「迂回します」


 その言葉に、全員が一瞬黙る。


「……正面突破じゃなくて?」


「正面は、腐ってます」


 容赦がなかった。


「腐っている扉は、

 開けようとすると臭いがつく」


 ミレイが、思わず吹き出しそうになる。


数字が動く


 アクアは、港湾管理局の端末を借りると、

 即座に計算を始めた。


「通界経由で、

 《グラド》の魔石を直接流します」


「リーヴァを通さない?」


「正確には」


 一拍。


「港は使いますが、制度は使いません」


 静かな一言だった。


「税は?」


「通界側で精算します」


「関税は?」


「発生しません」


「……は?」


 港湾職員が、固まる。


「街道と転移を併用すれば、

 法的には“国内移動”扱いです」


 ミレイが、目を見開く。


「抜け道……?」


「いいえ」


 アクアは、首を振った。


「書いてある通りです」


最初の異変


 その日の午後。


 市場が、ざわつき始めた。


「……魔石、安くないか?」


「しかも、質が揃ってる」


「どこから来た?」


 答えは、簡単だ。


 通界。


 だが、リーヴァの商人たちは気づく。


「……港、使ってるのに」


「税、払ってない?」


「いや、払ってるぞ。

 “別の場所”に」


 金が、流れ始めた。


 リーヴァを避けて。


 だが。


 リーヴァの港を使って。


会議室の混乱


「どういうことだ!」


 商業評議会が、荒れる。


「港が使われているのに、

 街の金が増えていない!」


「いや、増えている」


 一人の商人が、冷静に言う。


「別の形で」


 資料が回る。


港湾使用量:増加


市場取引量:増加


税収:微増


「……微増?」


「はい。

 通界経由の取引が、

 “こぼれて”市場に落ちてきています」


 沈黙。


 誰かが、呟いた。


「……これ、止められるか?」


 答えは、出なかった。


アクアの条件


 夕方。


 アクアは、商業評議会に呼ばれた。


「要求は?」


 商人が、警戒しながら聞く。


「ありません」


 即答。


「……は?」


「ただし」


 一拍。


「邪魔しないでください」


 それだけだった。


「我々に、何の得が?」


「流れに乗れます」


 アクアは、淡々と続ける。


「逆らえば、

 港は使われたまま、

 街は通過点になります」


 沈黙。


 脅しではない。

 予測だ。


フレイの確認


 宿に戻り、フレイが言う。


「……落ちたな」


「いえ」


 アクアが首を振る。


「選んだだけです」


 カイルが、ぽつりと言う。


「……怖いな、これ」


「剣より?」


「比べ物にならない」


 ミレイが、苦笑した。


通界への報告


 夜。


 通信結晶が光る。


『リーヴァ、接続完了』


『制度は維持、流通は通界基準』


 少し間があって、返事。


『了解』


 リクスの文は短い。


『その街、もう戻れないな』


 アクアは、静かに答えた。


「ええ」


「戻る理由がありません」


ドーン(静・経済)


 翌朝。


 港は、昨日より忙しい。


 だが、誰も叫ばない。


 誰も止めない。


 ただ、金が回る。


 リーヴァは、

 気づかないうちに――


 通界経済圏の港になった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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