第40話 評価がない場所で、人は本性を出す
夜になっても、通界は止まらなかった。
港の灯り。
街道を行き交う荷車。
転移陣の明滅。
研修生たちは、倉庫の隅に集められていた。
十二人。
学園では「将来有望」と括られていた顔ぶれだ。
研修生たち
リクスは、少し離れた場所から彼らを見ていた。
カイル
前線型。剣士。
学園では実技トップ。
だが、今日一日で顔に焦りが浮かんでいる。
ミレイ
理論派。魔法研究専攻。
状況をノートにまとめているが、答えが出ていない。
ロウ
商才あり。
港の動きをずっと観察していた男。
エナ
支援魔法使い。
人の後ろに立ち、指示を待つ癖が抜けない。
ディオ
学園幹部候補。
腕を組み、不満を隠さない。
他にも数名いるが、
全員が「様子見」の顔をしていた。
何も言われない
「……あの」
沈黙に耐えきれず、エナが小さく声を上げた。
「今日の……評価は?」
アクアが振り向く。
「ありません」
「明日以降の方針は?」
「各自で決めてください」
それだけ言って、去ろうとする。
「待ってください」
今度はディオだった。
「研修とは、本来――」
「学園の話は、ここでは通じない」
フレイが静かに遮る。
「ここでは」
一拍。
「役に立つか、立たないか。それだけだ」
空気が冷えた。
最初の脱落
「……無理だ」
誰かが呟いた。
名は レオン。
中堅評価の魔法使い。
「評価もない、指導もない。
責任だけ押し付けられる」
荷物を掴み、立ち上がる。
「俺は帰る」
止める者はいなかった。
次に、サラが続く。
「……私も。
ここ、怖い」
二人は、門へ向かった。
背中は、責められない。
残る者たち
残ったのは、十人。
カイルが、拳を握る。
「……悔しい」
誰に言うでもなく、吐き出す。
「俺、強いって言われてきた。
でも今日は……」
フレイが、淡々と答えた。
「役割が違っただけだ」
「言い訳に聞こえます」
「言い訳だ」
即答だった。
「だが、通る言い訳だ」
カイルは、目を見開いた。
ロウの気づき
「……ここ」
ロウが、ぽつりと言う。
「全員、仕事してますよね」
「当たり前だ」
フレイが言う。
「違う」
ロウは首を振った。
「“命令されて”じゃない」
リクスが、初めて口を開いた。
「気づいたな」
ロウは、喉を鳴らす。
「……俺、残ります」
「理由は?」
「商売になる」
一瞬の沈黙。
次の瞬間、アクアが微笑んだ。
「正解です」
エナの覚悟
「……私も」
エナが、小さく手を挙げる。
「役に立たないの、分かってます」
「分かってるなら、なぜ残る」
リクスの問いに、震えながら答える。
「……初めてなんです」
「何が」
「必要とされるかもしれない場所」
フレイが、静かに頷いた。
「それでいい」
ディオの選択
「……俺は」
ディオが、歯を食いしばる。
「様子を見る」
「残る?」
「一時的にだ」
リクスは、それ以上何も言わなかった。
それも、選択だ。
名簿の更新
アクアが、紙を一枚出す。
「現在、残留希望者は八名」
「脱落二名」
「保留二名」
彼女は、淡々と続ける。
「評価は、しません」
だが。
「役割は、与えます」
研修生たちの目が、変わった。
リクスの宣言
「ここは、学園じゃない」
リクスの声は、低い。
「教えない」
「守らない」
「引き上げない」
一拍。
「それでも残るなら、歓迎する」
沈黙の後。
誰も、席を立たなかった。
夜の通界
外では、港が回っている。
世界は、研修生たちを待たない。
だが。
残った者たちは、
自分から世界に混ざることを選んだ。
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