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魔力ゼロって言われたけど、無限に溜まってたのでダンジョンから国を作ります  作者: 蒼野湊


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第4話 魔物を倒したら、石が落ちたんだけど

学園の外に出ると、空気が少し違った。


(あ、これだ)


胸の奥の“重さ”が、ほんのわずか軽くなる。

建物の結界が減った分、流れが素直だ。


「本日は校外実習だ」


実技主任の声が響く。

目的地は、学園から半日ほどの低危険地帯。

名目は“魔物への慣熟”。実態は“事故らせないための見学”。


(見学、得意です)


森の縁。

薄暗くて、じめっとしていて、いかにも「出ます」って雰囲気。


「出たぞ! スライム!」


前列の生徒が騒ぐ。


ぷるん、と現れたのは、透明な魔物。

弱い。たぶん。


(……弱い、よね?)


そう思った瞬間、頭の奥がすっと整理された。


(あ)


分かる。


言葉じゃない。

数字でもない。


でも、確かに“情報”が流れ込んだ。


――危険じゃない。

――動きは遅い。

――中心を崩せば終わる。

――価値は……低い。


(え、何これ)


僕は瞬きした。


(今の、知識? 直感?)


混乱している間に、前衛の生徒が剣で突いた。


「よっしゃ!」


次の瞬間。


スライムは、光って消えた。


「……え?」


そこに残ったのは、拳サイズの石。


ころん、と地面に転がる。


「魔石だ!」


誰かが叫んだ。


「解体、いらないのか!」

「回収しろ!」


(……便利だな、この世界)


次の魔物。


今度は、僕の番だった。


「フェルド、危険なら下がれ!」


主任が言う。


(危険……じゃないと思うけど)


さっきと同じ“分かる”感覚が来る。


(中心、そこ)


押さない。

通す。


小さく、息を吐いた。


魔物は、抵抗する暇もなく消えた。


ぽとん。


また、石。


(……毎回、石なんだ)


僕は、しゃがんで拾った。


軽い。

すごく軽い。


(貨幣より軽いんじゃ?)


その瞬間、頭の中にまた“分かる”が来た。


――価値:低

――換金可

――素材用途あり


(あ、これ)


(鑑定……ってやつ?)


誰かに教わったわけじゃない。

でも、名前をつけるなら、それしかない。


「フェルド!」


主任が近づいてくる。


「今の、何をした?」


「……通しました」


「それは昨日聞いた!」


(ですよね)


「魔法の種類は?」


「分かりません」


(本当に分からない)


主任は、魔石を見た。


「……魔石生成、正常」


「だが、魔力消費が――」


補助教官が首を振る。


「検出されません」


(またゼロ)


主任は、空を仰いだ。


「……今日は、これ以上やらせない」


(やっぱり)


実習は、予定より早く切り上げになった。


帰り道、僕は考えていた。


(魔物を倒すと、石が落ちる)


(石は軽い)


(価値が分かる)


(……これ、稼げるのでは?)


その思考が浮かんだ瞬間、胸の奥が少しだけざわっとした。


(あ、ダメな発想?)


でも、もう遅い。


合理的な思考は、止まらない。


寮に戻って、魔石を並べてみる。


十個。

二十個。

三十個。


(……かさばる)


鞄が、地味に重い。


(これ、全部持ち歩くの?)


(絶対、面倒)


そう思った瞬間。


――消えた。


「……え?」


魔石が、消えた。


床にも、鞄にも、ない。


一瞬、血の気が引いた。


(盗まれた!?)


慌てて周囲を見る。


――出せる。


そんな感覚が、頭に浮かんだ。


(……出す?)


思った通りに、手を伸ばす。


ぽとん。


魔石が、出てきた。


(……しまえるんだ)


理解した瞬間、ぞくっとした。


(便利すぎない?)


(……あ)


(これ、アイテムボックスってやつだ)


その夜。


地下観測室。


水晶が、ため息をつくみたいに光った。


《異常記録》

新規発現:情報認識(鑑定・原始)

新規発現:収納(未分類)

発現条件:不明(合理的思考と連動)


記録係は、震える声で言った。


「……スキル、ってやつか?」


「本人の自覚、ないぞ」


「……一番厄介だな」


僕は、まだ気づいていない。


鑑定で“価値”が分かることが、

収納で“量”を無視できることが、


どれだけ世界の常識を壊すかを。


ただ一つ分かるのは。


(……これ、冒険者になったら楽そう)


その考えが、次の扉を開く。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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