表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力ゼロって言われたけど、無限に溜まってたのでダンジョンから国を作ります  作者: 蒼野湊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/63

第39話 研修という名の、放り込み

 通界の門が開いた瞬間、空気が変わった。


「……え?」


 最初に声を漏らしたのは、研修生の一人だった。


 目の前に広がるのは、

 学園で見慣れた訓練場でも、冒険者ギルドでもない。


 港。

 市場。

 遠くで動くクレーン。

 転移陣の淡い光。

 行き交う人間たちの、迷いのなさ。


「……ここが、通界?」


 誰かが呟く。


 だが、誰も答えない。


 代わりに――


「到着確認」


 淡々とした声が、場を切った。


 振り向くと、青い外套を羽織った女性が立っている。

 整った所作、無駄のない視線。


 アクアだった。


「研修生、全十二名。

 荷物は持っている分だけで十分です」


「え、部屋は?」


「後で決まります」


「スケジュールは?」


「今からです」


 研修生たちがざわつく。


「説明は……?」


 アクアは一瞬だけ首を傾げ、はっきり言った。


「ありません」


 沈黙。


「ここでは」


 彼女は続ける。


「自分で見て、自分で判断してください」


研修だと思っていた


「……本当に、研修なんですか?」


 そう聞いたのは、学園で成績上位だったカイルだ。


 アクアは答えない。


 代わりに、港の奥を指差した。


「今、あそこでは」


 視線の先で、荷役が止まりかけていた。


「魔石輸送が詰まっています」


「それが……?」


「誰か、行きます?」


 研修生たちは、顔を見合わせた。


「え、俺たちが?」


「手伝うんですか?」


「評価は?」


 アクアは、静かに言う。


「ありません」


 その瞬間、空気が一段重くなった。


 評価がない研修。

 学園では、あり得ない。


フレイの登場


「……行くぞ」


 低い声。


 振り向くと、そこに立っていたのは

 灰色の外套を纏った剣士。


 フレイだ。


「迷ってる時間は、仕事にならない」


 彼女は研修生たちを一瞥する。


「ついて来たい奴だけ、来い」


 それだけ言って、歩き出す。


「ちょ、ちょっと待って!」


 何人かが慌てて後を追った。


 残りは、立ち尽くす。


リクスは、前に出ない


 その一部始終を、少し離れた高台から見ている男がいた。


 リクスだ。


「……いいの?」


 隣でアクアが小声で言う。


「何も説明しなくて」


「いい」


 リクスは即答した。


「説明すると、“研修”になる」


「今は?」


「放り込みだ」


 アクアは、少しだけ笑った。


「相変わらず、乱暴」


「優しいだろ」


「どこが」


「選ばせてる」


 その言葉に、アクアは何も返さなかった。


 ただ、視線を研修生たちに戻す。


初仕事、初挫折


 港では、すでに問題が顕在化していた。


「魔石の質が混ざってる!」


「等級が違うのを一緒に流すな!」


 怒号。


 フレイは状況を一瞬で把握する。


「分別ラインを止めるな」


「でも、遅れます!」


「遅れた方がマシだ」


 研修生の一人、ロウが気づく。


「……これ、仕分けの順番が悪い」


「何?」


「魔力反応で先に振り分ければ――」


 言い終わる前に、現場が動いた。


 数分後。


 滞留していた魔石が、一気に流れ始める。


「……通った?」


 誰かが呟いた。


評価は、ない


 仕事が終わった後。


 誰も、褒めない。

 誰も、点をつけない。


 ただ。


「次、街道側が詰まりそうだ」


 フレイが言う。


「行ける奴、来い」


 それだけだった。


 研修生たちは、息を切らしながらも――

 誰一人、帰りたいとは言わなかった。


アクアの一言


 リクスの隣で、アクアが言う。


「……残りそうですね」


「何人?」


「半分以上」


 リクスは、少しだけ目を細めた。


「上出来だ」


「選別が早い」


「向いてない奴は、ここで折れる」


 一拍。


「向いてる奴は――」


 アクアが、続きを言った。


「勝手に育つ」


ドーン(静)


 夕方。


 通界の港は、今日も回っている。


 そこに、学園研修生が混ざっただけ。


 ――ただ、それだけなのに。


 世界は、もう一段進んだ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ