第30話 ドーン:川港拡張、都市が跳ねる
決裁は、静かに行われた。
「川港、拡張する」
それだけだ。
誰も驚かない。
反対もしない。
この街では、決断が早いこと自体が日常になっていた。
拡張内容
「整理します」
アクアが淡々と読み上げる。
川港の宿泊地、倍増
倉庫群を港と直結
大型船対応の桟橋増設
通関・検査の動線一本化
「全部、既存設備の延長です」
「無理は?」
「ありません。
むしろ、今やらない方が損です」
フレイが短く言う。
「守りは、先に張れる」
「了解」
それで終わった。
工事開始
翌朝。
音が違った。
石を切る音。
杭を打つ音。
号令と足音。
街道の時とは、規模が違う。
「……これ」
セレナが、川岸で目を丸くする。
「もう“工事”じゃなくない?」
「都市改修だな」
俺は答えた。
連鎖反応
変化は、予想以上に速かった。
まず、船が来た。
「停泊していいか?」
「倉庫、空いてるか?」
「次の積み荷、ここで組める?」
まだ完成していない。
それでも、情報は先に流れる。
「拡張するらしい」
「通界が、本気出した」
それだけで、人が動く。
数字が跳ねる
三日後。
「……報告です」
アクアの声が、少しだけ高い。
「港関連収入、前週比で二倍です」
「まだ完成してないよな?」
「はい。
“予約”と“前払い”です」
セレナが笑う。
「期待値で金払ってるってこと?」
「そうなります」
俺は、正直に言った。
「……楽しいな、これ」
「主」
アクアが即座に返す。
「これは中毒性があります」
「だろうな」
だからこそ、仕組みで縛っている。
市民の変化
市場の声が、変わった。
「港で仕事増えるぞ!」
「船向けの飯、考えろ!」
「倉庫番、募集だ!」
誰も、不安を口にしない。
なぜなら。
すでに一度、成功体験をしているからだ。
夜、川港にて
夜。
拡張中の桟橋に立つ。
川面に、灯りが揺れている。
「……ねえ」
セレナが言う。
「この街、どこまで行くと思う?」
「さあ」
正直な答えだ。
フレイが、遠くを見ながら言う。
「少なくとも、“守る価値”は増え続ける」
ルミナが、静かに続ける。
「人が希望を預け始めています」
ノクスが、低く笑う。
「預けられたら、返さないとな」
結論
俺は、川と、その先を見た。
海は、まだ遠い。
でも、もう繋がっている。
「……よし」
小さく息を吐く。
「これで、都市は一段上だ」
誰かが強いからじゃない。
誰かが頑張ったからでもない。
判断が止まらず、金が回り、
人が信じて動いた結果だ。
ドーン、と音は鳴らなかった。
だが確かに。
通界はこの日、
“都市”から“貿易拠点”へと跳ねた。
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