第27話 金が、増えている理由
最初は、見間違いだと思った。
「……もう一度、説明してくれる?」
俺は帳簿から顔を上げた。
「先週比で、収入は一割増です」
アクアは、事実だけを述べる。
「俺たち、何かしたか?」
「いいえ」
「ダンジョンにも行ってない」
「行っていません」
「大きな投資も?」
「していません」
……妙だ。
金が増えた三つの理由
「理由は、三つあります」
アクアは資料を並べた。
一つ目:人が、留まった
「宿泊日数が伸びています」
「旅商人?」
「冒険者も含めて、です」
通界は今、
“通る街”から“滞在する街”になっていた。
二つ目:判断が、止まらない
「主の確認を待つ工程が消えました」
胸が少し痛む。
「即断即決が増えた結果、
機会損失が減っています」
「街が、呼吸してるな」
「ええ」
三つ目:信用が、積み上がった
アクアは、静かに言った。
「この街は、“誰かがいなくなっても壊れない”と見られています」
「……それは」
「預けられる、という意味です」
金も。
商品も。
人も。
それぞれの実感
「……不思議」
セレナが呟く。
「私たちが頑張ってた頃より、安定してる」
「頑張る必要がなくなったんだ」
フレイが短く言う。
「それは、悪くない」
ルミナが頷く。
「人が人を信じなくても、仕組みが信頼される」
結論
俺は、帳簿を閉じた。
「なら、答えは一つだ」
全員がこちらを見る。
「使おう」
「街に?」
「ああ」
「貯めるより、回す」
アクアの目が、完全に仕事モードになる。
「街道、防壁、倉庫、港……」
「全部だ」
俺は窓の外を見た。
人が動き、金が巡っている。
「この街はもう、
誰かの力で稼いでるんじゃない」
静かに言う。
「仕組みで、生きてる」
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